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実際の「不法投棄」の事件を参照している
とはいえ、本作の恐怖の対象におけるヒントはある。短編を長編化するにあたって、実際の「ある業者が⾻壺を不法投棄していた」事件を、劇中では「捨ててはいけないものも捨てられる⼭だったから」という解釈に形を変えて物語に取り込んでいるのだ。また、脚本家の⾦⼦鈴幸とのプロット作りでは「⼭に絶対的に怖いものがいる」が基本的な合⾔葉となっていたという。

また、⼩林剛プロデューサーは近藤監督が商業映画監督デビューするにあたって「この監督となら、純粋に怖いものを追求したい」と考えたそうで、それは「妙にトリッキーな展開の物語だったり、ショック描写のつるべ打ちだったりといったようなことはせず、じっくりと恐怖だけを朴訥に考えていくのがこの監督の資質に合っていると思ったから」だったそうだ。そのために近藤監督と話したのは「今回の恐怖の対象は『恨み』や『呪い』といったものでは全くなく、ただただ怖いもの、抗いようのない“恐怖”そのものにしよう」だったという。(※)
※映画『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』作品資料より
それだけなら漠然とした内容にもなってしまいそうなところだが、それがやはり「わからない」からこその恐怖につながっている。また、不法投棄という現実の犯罪を参照したからこそ、フィクションでも「本当にありそう」な説得力を担保しているとも言える。その「何かが山に捨てられている」ことを前提に物語を追えば、真相に辿り着けるかも……いや、より腑に落ちないところができて、さらに恐ろしく思えるのかもしれない。