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「わからない」からこそ怖い
近藤監督は「この映画では⽬にはみえない“何か”が怖いのだと考え、作中の彼らが感じる恐怖⼼を精⼀杯想像し、ともに体験してもらうことを企図しました」と映画公式サイトのコメントで語っている。なるほど恐怖というものは人間の心理や想像力、もっと言えばその想像を経てもなお「わからない」ことにも起因するという事実を本作では再確認できる。
たとえば、前述したビデオテープの映像も、ノイズの多さはもとより死角も多いため、何が起こっていたのかを観客に想像させる。しかし、想像すると正常な理屈では到底納得できるはずもない結論に辿り着くので、「わからない」恐怖がさらに深まる。

そして、映画中盤ではある人物から断片的に「この場所で何があったのか」が語られる。そこにはおぞましい人間の悪意、あるいは超常的な存在があるようにも感じられるのだが、そちらも(少なくともその時点では)結局ははっきりとはしない。「わかりそうでわからない」という感覚はもどかしく、いっそのこと「幽霊ですよ」「狂った人間ですよ」などとはっきり言ってくれたほうが安心できるのだが、いい意味で意地悪にも本作は「腑に落ちる」ような回答を簡単には示してくれない。