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NEWS EVENT SPECIAL SERIES

日本のラウドシーンの礎は90年代〜10年代の大阪から。FACTのレーベルが明かす縁

2025.8.15

#MUSIC

「音楽と共にどう生きていくのか?」という問い

同じ大阪のシーンにいた(いる)3人が、それぞれ歩んでいった音楽人生と、そこから与えられた影響。それは一言で語れるはずもなく、一言で語れないからこそ、美しく儚い。それでもあえて、今、この3人に問いたい──「あなたにとって、音楽はどのような存在ですか」。

Takayuki:シンプルになかったらあかんもの。音楽がなかったら今の自分はない。

Ohga:もともとは音楽を聴くのも、ライブを観るのも好きだったけど、自分にとってもはや音楽は造るものであり、演るもの。だから音楽をしっかり聴くとかは、正直もうない。影響を受けたくないし、造る音楽にどうしても関わってきてしまうから。もちろんさらっと聴くことはあるけど、入ってくる音楽は、ライブで観る、聴く音楽だけ。そこからの影響はもちろんある。今まさに生みの苦しみの中にいるから、毎年毎年、毎回毎回。それができなくなったら音楽をやめると思うし、ずっとその苦しみの中で生きていこうと思ってる。

植野:僕にとって音楽は、昔はやるものだったけど、結局のところ語るものであり、伝えたいものだったのかなと。自分が今一番好きなことって、音楽を聴いて、それについての感想を書くこと。それをしている時間が、一番幸せなんですよ。夜10時くらいからやり始めて、1枚のアルバムを聴いて、12時くらいから1時くらいまで「こういう文章にして書こうかな」って考えて、それを発信して。その時間だけは夢中になれる。自分としてはそこに辿り着いた感じがする。

3人それぞれの導き出した答えからは、かつて同じ場所で、同じ時間を共有した末に、それぞれが選んだ道、信じた道が浮かび上がってくる。そして「音楽と共にどう生きていくのか?」という命題への、どれもが間違いではないアンサーとして、これから音楽で生きることを志す人、そして音楽で生きることを諦めようとする人における、「兆し」や「標べ」になってほしいと願う。

maximum10より、あの時の大阪の奥深いシーンに寄せて

実は、僕も、かつては、バンドマンとしてその大阪のシーンの片隅にいた。そのシーンは、本当に新しくて、とんでもなく硬くて、なのに、ダイアモンドの原石とは決して言えないほど、怖くて危なくて、だから、憧れた。

今思えば、彼らに憧れた時点で、バンドマン(アーティスト)としては終わりだったんだろう。僕は、そうして、ステージに立つことをやめ、レコード会社に入った。それでも、あの時代のあのシーンにいた「誇り」というより「燻り」のような感覚に駆られて、自腹でイベントを開催していた。至らぬことばかりだったのに、結果、素晴らしいバンドたちが出演してくれた。

FACTとは、バンドマン時代に対バンしたこともあったけど、そこっていうより、むしろパンクイベンター時代に、同じくTWILIGHTってイベントとレーベルをやってた相坂くんを通じて交流を深めて、結果、契約することになった。FACTからしたら、かつて対バン相手だった奴が、急にエイベックスの名刺を持って来たのだから、最初は、壮大なドッキリだと思ってたらしい。

TWILIGHTは、その後も、ずっとmaximum10を支えてくれた盟友。FACTをメジャーシーンに引っ張り上げたのは、僕らというより、その頃、まだ20代になったかならないの相坂くんと言っても過言じゃない。

FACTが売れたことで、多くのラウド / パンクバンドとの契約の話が舞い込んだ。でも、僕は、どのバンドともサインすることはなかった。ラウドがどんどんと大きくなる中で、maximum10がサインしたのは、あの時の大阪の奥深いシーンにいた(あるいは、影響を受けたり、関係性のある)バンドばかり。

憚らず言えば、あの時、あのバンドたちがいなければ、今のラウドシーンはないと、僕は、今も、昔も、本気でそう思い続けている。でも、ここまで大きなシーンにしたのは、決して、誰か一人とかどこか一部の功績じゃない。そこには、奇跡のような「It’s a small world」が広がっていて、これまで、そのことを話す機会はなかった。

じゃあ、なんで、今になってわざわざこんなことするんだ? って話になるけど、それは、うまく言葉にできない。あえて言うなら、巡り合わせだ。

maximum10は、今年、久々に、新人バンドをリリースする。「Nikoん」というバンド……彼らを初めて下北沢で観たとき、あるバンドのメンバーがDJをしていて、FACTのリミックスを流してくれた。FACT、今でもめっちゃ聴いてます、と言ってくれたとき、僕は、心に久々の血が流れていくのを感じた。

そのNikoんを知ったきっかけが「HOLIDAY! RECORDS」だった。色々と話していくうちに、その店主である植野さんも、POP DISASTERをはじめmaximum10のバンドを聴いてくれていて、waterweedの大賀とも旧知の仲だと知り、結果、「対談しませんか?」という話になった。そうして、また、知るわけだ。何度も、何度も、俺たちは、悪い意味じゃなくあの鬱蒼とした狭い場所そして瞬間で邂逅していたんだと。

こうして、僕は、また、あの時のあのシーンに背中を押された。

アンダーグラウンドの根の張り方の継承は、きっと、未来、地上に咲く花の咲き方に通じているはずだ。それを余すことなく伝えるためには、コンテンツだけじゃなく、プロセスやコンテクストも必要不可欠だと思う。そういう意味で、今回の鼎談プロジェクトは、ドキュメント(記録)でありイベンチュアルな(=誰にでも起こりうる)メディアアート(=あらゆる人々にとって永遠に続いていく自分事)だと思っている。

音楽に世界は救えないかも知れない。でも、誰かの1日、いや、もしかするとたった数秒かも知れないけど、そんな些細な日常を非常に変えることはできると、本気で信じている。

そして、時には、人生があらぬ方向に狂っていく。

その逸脱は、音楽こそ全てである場所 / 音楽でなければ意味のない時間 /音楽が音楽そのものだけで存在できる世界にしか存在しない……きっと「音楽以外のあらゆる外側」でしか笑えない人々にとっての救いなんじゃないか? と、今回の企画を通じて、この3人の生き様に再認識させられた。

「maximum10 compiles ourselves. MAYDIE.3」

2025年8月8日(金)リリース(HOLIDAY! RECORDS専売)

〈下記サイトにて販売中〉
https://holiday2014.thebase.in/items/107806542

・収録曲
01. bend / Nikoん
02. step by step / Nikoん ▶︎ https://youtu.be/jPWefQsakl8
03. elate / POP DISASTER ▶︎ https://youtu.be/9Ejq9v5lBns
04. 555 / POP DISASTER ▶︎ https://youtu.be/U4Gq0bwTg14
05. water_debris / sfpr ▶︎ https://youtu.be/gBwjBYMve9w
06. Sinking / sfpr ▶︎ https://youtu.be/3g6GHmdEAPQ
07. Refuse / waterweed ▶︎ https://youtu.be/tT5Yx05J1CY
08. Frontier / waterweed ▶︎ https://youtu.be/of15XvVRuXc
09. 逃避行 / 十五少女 ▶︎ https://youtu.be/N3qHWx8qTLQ
10. 被投降拒否 / 十五少女 ▶︎ https://youtu.be/20NXj1q-ylg

・価格:2,000円(税込)

※CDのみの商品となります
※ピクチャーレーベル仕様

『maximum10 presents MAYDIE / Issue 1』

・出演:
 Nikoん/POP DISASTER/sfpr/waterweed(A to Z)
 ※ 十五少女の出演はございませんので、ご注意ください。

【大阪公演】
・会場:大阪・難波 Yogibo HOLY MOUNTAIN
・開催日時:2025年8月17日(日)17:00 開場 / 17:30 開演
・チケット:https://eplus.jp/sf/detail/4326310001-P0030001

【東京公演】
・会場:東京・新代田 LIVE HOUSE FEVER
・開催日時:2025年8月23日(土)17:00 開場 / 17:30 開演
・チケット:https://eplus.jp/sf/detail/4325030001-P0030001

・料金:前売り/3,000円(税込)/ 当日/3,500円(税込)

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