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「何十年と活動する歌手になりたい」
ーそういった昭和歌謡の特色を、現代にオマージュする意義はどこにあると思いますか?
遼:曲を聴くだけで、「こんな時代があったのか」と知れることです。作品に触れるだけで背景が知りたくなる。そういうものが、長くたくさんの人に愛される作品の特徴だと思うんです。そういう良さを引き継ぐことですね。
遼:私は曲を書くときに、20年後に聴いてくれた人がどう感じてくれるだろう、と思ったりするんです。それは、何十年と活動する歌手になりたいから。Little Black Dressは、楽曲やビジュアルの方向性がコロコロ変わるとよく言われるんですけど、その時代に何を感じて、どういう形でそれを発信するのかを、いろんな人と一生懸命考えた結果なんです。何十年も続けていたらそんなことは言われなくなると思うので、今は思う存分、その時々の変化を楽しんでいます。

ー今を切り取って見ると方向性が変わっているように見えるけど、後々振り返れば一貫性が浮き出てくるという。
遼:わかってもらえるはずです。ゴッホとかピカソの絵を観るたびに、自分が死んでから評価されるなんて、そんなに虚しいことはないけど、作品を残すってそういうことだよなと感慨深くなるんです。
ーサウンド面でも1980年代邦楽ロック感が溢れています。今回のアレンジャーの笹路正徳さんはプリンセス プリンセスやSHOW-YAのプロデュースでまさにその時代の音を作った1人ですね。
遼:笹路さんは私の好きなアーティストさんのアレンジも担当されていたので、うれしかったです。アレンジャーさんと一緒に細部まで作ることもありますが、今回は弾き語りで作ったデモを笹路さんにお渡しして、お任せさせていただきました。弾き語りに全てを詰め込んだので、それで気が済んじゃったんです。どういう世界観になるのか全く想像できなかったんですが、イントロのギターとか後半の様子がおかしくなるゾーンはデモにもあったので、それを採用してもらいました。自分の中ではアン・ルイスさんの“あゝ無情”みたいな、女性が肩で風を切って歩いてるようなイメージはあったので、まさにそういうアレンジが返ってきて「想いは一緒だった!」と。
ーLittle Black Dressの魅力の一つとして、多彩なアレンジャーや作家が参加していることがありますよね。歌謡曲、J-POPのレジェンドたちが名を連ねているという。
遼:本当に環境に感謝ですね。生まれてきた曲に、似合う服を着させてあげる感覚というか。「この色が似合うな」って。一番似合う服を作ってくださる方にお願いさせてもらっています。

ーこれからはどんな人と一緒にやってみたいですか?
遼:林哲司さんに曲を作っていただくことは叶ったんですけど、筒美京平さんに作っていただく夢は残念ながら叶わなくて。最近は同世代の方々とのお仕事が多いんです。ライブのバンドメンバーもずっと大ベテランの先輩方だったんですけど、この前のワンマンは20代、30代のメンバーでしたし。外国の方とご一緒する機会も増えていて、これからは今まで私が大先輩から受け継いできたエッセンスを同時代の人たちと新しい感覚でやることに挑戦していきたいです。