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箏ありきではなく、自分ありきで挑む海外のステージ
ーアルバムのラストに収録されているのは作曲家・ピアニストのフランチェスコ・トリスターノとコラボレーションをした“落葉”。彼もエレクトロニックミュージックとの接点が強い音楽家ですね。
LEO:一番緊張したコラボだったかもしれないです。レコーディングの半年前ぐらいに、2人で1時間ぐらい即興をして。そこから面白かった部分を採譜して、あとは空白にして「埋めてください」って渡したんです。でもその譜面を書くのに3ヶ月くらいかかってしまって。書いては全部白紙に戻して、ということを何回も繰り返したので、最終的に出来上がったものはアイデアの詰め合わせみたいな、おせちみたいな感じになりました(笑)。でもすっごい楽しかったです。レコーディングのその日の様子が朝から夜まで全部思い出せるぐらい、記憶に残ってますね。
ートリスターノは箏という楽器に対して、どんな印象を話していましたか?
LEO:実は、彼はもともと箏が好きだったんです。日本ではあまり有名じゃないですけど、アメリカでなぜか100年前ぐらいに成功している、衛藤公雄という箏奏者がいるんですね。トリスターノはその人のアルバムをずっと聴いていたそうで、それも今回コラボを引き受けてくれた理由の一つだと思います。
クラシックのピアニストとツアーを回るとき、僕は角が立たなくてノイズ成分の少ない、丸みのある音を意識していたんです。でもトリスターノは箏のノイズが好きで、「ピアノでは出せない部分だから、それをもっと生かしてほしい」と言ってくれて。一緒に演奏すると、どうしても伴奏と主メロディみたいな感じになりがちなんですが、彼は常に対等な関係に持って行こうとする。そこがアンサンブルしていてすごく面白かったです。ちなみに“落葉”というタイトルもトリスターノの提案で、前日まで箱根の温泉に行ってて、早朝に山道をランニングして、紅葉が綺麗だったからそのタイトルを提案してくれました(笑)。

ー日本的な情緒も理解してるんですね(笑)。では『microcosm』というタイトルはどのようにつけたのでしょうか?
LEO:以前野村萬斎さんと舞台でご一緒したときに、僕の音楽を聴いて、「LEOくんの音楽は1つの音から小さな宇宙が生まれていくようだ」と言ってくれて。そのフレーズが好きでずっと覚えていたので、今回「小宇宙=microcosm」をタイトルにしたんです。
ーたくさんの素晴らしいアーティストが参加していることも、まさに小宇宙のようですよね。途中で「今回はアルバムを作り終えて、またすぐ次にやりたいことがある」という話がありましたが、実際この先の展望としてはどんなことを考えていますか?
LEO:このアルバムは自分でもとても好きなんですけど、一つ残念なのがライブで全く再現できないことで(笑)。このアルバムを制作して得た自由な感覚を、今後のライブでは表現していきたいです。11月に網守将平さんや大井一彌さんとのライブを控えていますが、そうした場で独自の世界観を作れるようになったら、また新たに誰かとコラボをしてみたいんです。歌もずっとやりたいと思っていて、今回でシンガーの方と一緒にやる方法も見えてきた気がしています。

ー海外での活動に関してはどのようにお考えでしょうか?
LEO:海外に行ったときは、どうしても僕というより楽器目当ての感じがしちゃって、しっくりこない部分があったんですよね。去年ヨーロッパでオーケストラと一緒に演奏したときも、みんなよかったと言ってくれたんですけど、もらった拍手が本当にその音楽がよかったから出てる拍手なのか、もの珍しい楽器を聴けたことに対する拍手なのか、自分の中で区別があまりつかなくて。「日本の伝統音楽です」っていう提示をしなくても、「面白い弦楽器を弾く、オリジナリティのあるポストクラシカルの人」として海外に行けたらいいなと思っています。
―箏ありきではなく、自分ありき。その順序が逆になったことは今後世界と対峙する意味でも大きな意味を持ちそうですね。
LEO:このアルバムの世界観の延長でソロセットを形にできれば、ようやく海外にも自信を持って挑める気がしています。再来年ぐらいに、自分の世界観が1人でも完成できるようになったら、海外への挑戦をもっとしてみたいなと思っていますね。
『microcosm』

【収録内容】
1.Cotton Candy
music & piano : 梅井美咲 mixed by: 君島大空
2.Vanishing Metro
produce & music: 網守将平 drums: 大井一彌
3.ぽたぽた
music: LEO piano:林正樹 tabla: U-zhaan arrangement: LEO・林正樹・U-zhaan
4.moments within
music: LEO
5.Night Scape
music & electronics: LEO
6.Microcosm Session
produce & music: 坂東祐大
saxophone & additional horn arrangement: 馬場智章
percussion: 小川慶太 bass: マーティ・ホロベック electronics & Violin: 町田匡
7.GRID // ON
music: LEO drums & synth: 大井一彌 track-make: LEO & 大井一彌
8.moments between
music: LEO
9.音の頃 feat. LAUSBUB
music & words: 岩井莉子(LAUSBUB) vocal: 髙橋芽以(LAUSBUB)
track-make: 岩井莉子(LAUSBUB)・網守将平 co-produce: 網守将平
10.Rays of Light
music & electronics: LEO
11.落葉
music: LEO & フランチェスコ・トリスターノ piano: フランチェスコ・トリスターノ
all tracks: koto by LEO
『LEO -moments within-』
日程:2025年8月29日(金)19:00~
場所:BLUE NOTE PLACE
(〒150-0013
東京都渋谷区恵比寿4-20-4
恵比寿ガーデンプレイス)
Guest: U-zhaan (tabla)
MUSIC SELECTOR: Rico Iwai (LAUSBUB)
公演詳細
https://www.bluenoteplace.jp/live/leo-250829/
『LEO – microcosm』
2025年11月5日(水)19:00開演[18:30開場]
【場所】
東京・新宿FACE
【出演】
LEO(箏)
網守将平(Synth)
大井一彌(Dr)
町田匡(Vn)
中川裕貴(Vc)
【一般販売】
8/29(金)10:00~
公演詳細
https://www.columbiaclassics.jp/20251105