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カイリー・ミノーグはいかにして、世代を超えて愛されるディーバになったのか

2025.3.11

#MUSIC

1980年代にデビューし、現在はZ世代やクィアコミュニティーからも支持される世界的ディーバ、カイリー・ミノーグ。3月12日(水)に東京・有明アリーナで行われる『Tension Tour 2025』での14年ぶりの来日公演を前に、56歳の今もなお世界中で愛される彼女の軌跡と輝きを紐解く。

デビューの衝撃——カイリー・ミノーグ、ポップ・スターへの第一歩

いま、カイリー・ミノーグを見られるのはどれだけ幸運なことだろうか。「アイ・シュッド・ビー・ソー・ラッキー、ラッキー、ラッキー、ラッキー!」と歌わずにはいられない。デビューから現在まで5つのディケイドをくぐり抜けてきただけでなく、最新ヒットを携えての来日なのだから。

カイリー・ミノーグ(Photo by marcen27 from Glasgow, UK

カイリーがカバー曲“The Loco-motion”でシングルデビューしたのは1987年のこと。もともとはオーストラリアの人気ソープオペラ(※)『ネイバーズ』に出演するティーンスターだった彼女が、慈善コンサートでキャロル・キング作曲のオールディーズソングである同曲を披露したことをきっかけに、リリースされることとなった。『ネイバーズ』の人気エピソードが放送されるタイミングだったこともあり、本国オーストラリアで大ヒット。1980年代を通じてもっとも売れたシングルとなった。

※ロングランで放送されるテレビのドラマシリーズのこと。1話完結でなく、ストーリーがのちのエピソードに続いていく形式をとる。

“The Loco-motion”のヒットを契機に『Kylie』でアルバムデビューすると、“I Should Be So Lucky”をはじめシングルヒットを連発。当時、ユーロポップを牽引していたプロデューサートリオのストック・エイトキン・ウォーターマンが手がけたきらびやかなダンスポップはカイリーのキャラクターとフィットし、アルバムは全英チャートで4週連続1位を獲得するなど数々の記録を打ち立てた。こうして、カイリーは瞬く間にスターダムを獲得することになる。ハウスなど当時のトレンドを取り入れたサウンドを軽やかに乗りこなし、狂騒的な時代を駆け抜けていった。

重要なのは、1980年代のUKでのエレクトロポップやシンセポップの隆盛とシンクロし、すでにカイリーがゲイコミュニティの間で人気を博していたことだ。挑発的なポップクイーンとして君臨していたマドンナに対し、ソープオペラ出身のカイリーはキュートで親しみやすいキャラクターとして愛されていた。

1990年代の試行錯誤、2000年代の大復活

しかし1990年代になると、ユーロポップの退潮とともにカイリーの人気にも翳りが見え始める。UKではブリットポップの台頭ともにシーンが変化し、彼女の音楽がトレンドとうまく噛み合わなくなった。また、彼女自身もトリップホップやエレクトロニカに接近するなど方向性を模索するがサウンド面での焦点が定まりきらず、批評的にもセールス的にも振るわない時期が続くことになる。いま思えば、女性ポップシンガーを軽視する風潮が強くなった時代背景もあったかもしれない。

本格的な復活となったのは、俳優としてのキャリアに集中したあとパーロフォンにレーベルを移籍してリリースした2000年のシングル“Spinning Around”と、同曲を収録したアルバム『Light Years』でのことだろう。ポップスへの回帰をテーマとした同アルバムは、1970年代のディスコを参照しながら華やかなダンスポップを全面的に展開。また、初期からのキュートなイメージを残しつつ、大人っぽいセクシーさを纏うようになり、ロビー・ウィリアムズとのデュエット曲“Kids”などでは洗練された現代的な女性像を提示していた。

そして2001年、決定的なシングル“Can’t Get You Out of My Head”がついにリリースされる。一度聴いたら忘れられない「ラン、ラ、ラ~」のフレーズ、どこか妖しい香りを放つシンセサウンドとディスコビート、そしてカイリーの艶っぽい歌。全世界で大ヒットしたこのキラーチューンはポップ史に残る一曲となり、ゲイクラブの超定番アンセムとして現在もダンスフロアを沸かせている。

同曲を収録した『Fever』は完成度の高いエレクトロポップを揃え、音楽的にもフォーカスができていたし、ミシェル・ゴンドリーが手がけた“Come Into My World”のミュージックビデオが話題を集めたこともあり、アイコンとしてもさらにクールな存在となっていった。

進化し続けるポップディーバ

その後もカイリーは時代の音を柔軟に取り入れながら進化を続け、ダンスポップの女王としての地位を揺るぎないものにしていった。また、かねてからシドニーのプライドイベントに出演していた彼女はクィアアイコンとしても絶大なものとなり、たとえば2010年のヒットシングル“All The Lovers”のミュージックビデオでは愛を交わし合うカップルのなかにゲイを多くフィーチャーするなど、クィアのオーディエンスを祝福し続けてきた。

https://www.youtube.com/watch?v=frv6FOt1BNI

そんなカイリーが2020年代に突入しても第一線で活躍しているのは驚異的なことだ。とりわけ16作目のスタジオアルバムとなった2023年の『Tension』年はキャリアを包括するエレクトロポップにモダンな感覚をミックスし、批評家からも高い評価を得た。なかでもリードシングル“Padam Padam”はTikTokでバイラル化したことで若いリスナーにもリーチし、世代を超えたヒットナンバーに。同曲がクィアコミュニティからクィアネスを讃えるものとして解釈されたのは、カイリーが長年クィアアイコンであり続けてきたことに対する信頼とリスペクトがあるからだろう。

https://www.youtube.com/watch?v=p6Cnazi_Fi0
https://open.spotify.com/intl-ja/album/4VNaEhdswqNiEMAcfSav9g

約14年ぶりとなる来日公演は、カイリーミノーグの40年近いキャリアすべてをセレブレートする輝かしいものになるはずだ。永遠のポップディーヴァが、日本に再び舞い降りる瞬間は見逃せない。

カイリー・ミノーグ『Tension Tour 2025』

開催日時:3月12日(水) 
Open 17:30 / Start 19:00
会場:有明アリーナ
公演ホームページ:https://www.livenation.co.jp/kylieminogue-2025

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