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ビーチ文化は平等。裕福かどうかは関係ない
─昨今日本では、日本で暮らす海外ルーツの方に対して排外主義的な考え方を見聞きすることがあります。コムアイさんはいま日本から来た人としてブラジルに滞在していて、どのような実感がありますか?
コムアイ:個人の実感としては、街を歩いているだけでみんな話しかけてくれるし、「外国人なのにいてごめんなさい」みたいな気持ちになったことは一度もないです。日本に来た人たちがそういう体験をさせてもらえているかはわからないので、そこは日本人としては申し訳ない気持ちになりますね。サルバドールにはほとんどアジア人がいないから珍しがられます。なにしろ地球の反対側どうしなので「ドラマがすごく好きなんだよね」と目を輝かせて言われて、「それ多分韓国かな〜」みたいなことはよくありますけど(笑)。もちろんブラジルも問題を抱えていて、例えば前回の選挙では本当に僅差でいまの政権になっているので、また今度、排外的だったり、LGBTQIA+の人の権利がないがしろにされるような政権になる可能性もある、紙一重の状況ではあります。(※)
※ブラジルではLGBTQIA+への排外的な事件が社会問題にもなっているが、LGBTQIA+の権利を守ることに積極的な態度を示すルラ現大統領は、次点のボルソナロと僅差で当選している。
いま人生で初めて海沿いに住んでいて気づいたのは、ビーチの文化ってすごく平等だなということです。海に行くと、いろんな人と出逢えます。海って水着は着ているけど、ほとんど裸みたいなもので、裕福な人もそうでない人も同じように泳いだり寝転んだり。

─地域によってはジェントリフィケーションが進んで富裕層向けに隔離されたビーチがあったりもしますが、本来開かれた場所ですよね。
コムアイ:サルバドールもホテルや高層マンションの建つ場所は、そういうものがあるかもしれないですけど、公共のビーチがほとんどです。住んでいるところのそばには、ポルトガル語で「コミュニティ」を意味する「コムニダージ」と呼ばれるスラム街があって。近所からいろんな所得の人たちが水着のまま歩いて来ていて、もちろんビーチは 無料だし、裕福かどうかは関係なく、みんなここでは平等に堂々と楽しめる、自由な空気があります。日本では禁止されていると聞いたけど、ブラジルだとビール片手に泳いでる人もいますね。感動したのは、大晦日の年越しのとき、みんな白い服を着て海に行くんですよ。居酒屋とかバーとかレストランに入らずに、道端やビーチに家から机やらご飯を持ってきてパーティ会場にしてしまう。で食べたり飲んだりして、カウントダウンが終わって年が明けたら、遠くの方で花火が上がっているのをみんなで見て、「わあ」とか言ってハグし合ってました。本当にお祝い上手です。
─そういうとき、どんな音楽が聴こえてくるんですか?
コムアイ:みんながスピーカーを持ってきて、それぞれ勝手に好きな音楽をかけています。歩くと立体的にいろんな音楽が混ざってきて、音楽の洪水みたいな感じです。サンバが多くて、あとはアシェ(※)というジャンルが人気ですね。
※ブラジル発祥の音楽ジャンル。
─それらが四方八方から(笑)。
コムアイ:みんな本当によく歌うし踊るんです。壁のないカラオケボックスみたいな?でも疲れる人たちじゃなくて、一緒に気分を持ち上げてくれる感じがするので、ブラジルにいる時は、自分の性格の中の陽気な部分がどんどん引き出される感じがします。
