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記憶の温室
続く第8章の展示室にも、めちゃめちゃキッチュで絵映えする作品『記憶の修築』が鎮座している。ガラス張りの温室の中に、作家の記憶を形作る雑多なかけらが詰め込まれており、中央には彼岸と此岸を結ぶモチーフである太鼓橋がかかっている。同じく国立新美術館で展示されていた、大竹伸朗の『モンシェリー:スクラップ小屋としての自画像』を想起する人も多いのではないだろうか。こちらは温室なので、中でいっそう記憶が育ち、発酵し、おかしな化学変化を起こしそうである……

橋のよく見える部分には、これみよがしにフェルメールなどの巨匠の画集が。たもとにはポルノグラフィや、女性の身体パーツをアップで写したフェティッシュな映像が配置されている。橋の下の暗くなった部分には、戦闘機が静かに横たわっていた。

橋の上には「Kenichi Tanaami」のタスキをかけたマリオネット(手足はどこぞの有名キャラクターとそっくり)。そしてこの、人をくったような顔とポーズである。

コラージュ作品は活動の初期から手掛けて来ているものの、第8章に至っては密度が半端ではない。モチーフを何層も重ね、ラメやラインストーンでデコり、画面が飽和してもなお狂乱は続く……そんなイメージだ。