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デザイン界のポップスター
1960年代、高度経済成長の真っ只中にデザイナーとしてキャリアをスタートさせた田名網。展示の序盤は1960年代〜70年代の作品だ。ポスターやシルクスクリーンを使った版画作品、油彩画にコラージュ、アニメーション作品と、その創造は多分野にまたがっている。壁いっぱいに掲げられたポスター群は圧巻だ。

溢れる色彩の中で、目を奪われたのはモノクロの『田名網敬一の肖像』だ。これらは超初期に田名網が自費出版した、名刺がわりのアーティストブックの原画である。ちょっとフェリックス・ヴァロットン(※)の版画を思わせる画面割りがスタイリッシュで、画家の構成力や線の力を存分に堪能できる。
※編注:19世紀末から20世紀初頭にかけてパリで活躍した画家。モノクロの版画が特徴で、日本でも東京・丸の内の三菱一号館美術館が多数所蔵している。

初期の作品のさまざまなところで登場する、「ネクタイを第二のキャンバスにする」テクニックが興味深い。画中画のように、びろーんと広がったネクタイが他のイメージを持ち込む「窓」の役割を果たしているのだ。想像してみると、当時の働く男性の自己主張の場って確かにスーツのネクタイだったのかもしれない、なんて思う。
田名網がアートディレクターを務めた人気雑誌『PLAYBOY』や『ヤングミュージック』の実物展示も。よく見ると、こちらもネクタイデザインである。
