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花譜と廻花(かいか) 1人の少女の歩みを、本人と山戸結希が振り返る

2024.12.20

廻花

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選択することの怖さや、誠実でいることの難しさを受け止めた二人のシンパシー

ー三部作のラスト、“スタンドバイミー”はいつ頃書いた曲ですか?

廻花:“スタンドバイミー”も高校生ぐらいです。高校生になると、「あのとき大人がこう言ってたのはこういうことだったのかな」とか、どんどん答え合わせみたいに昔のことを思い出すことが増えたんですけど、それと同時に忘れてることがいっぱいあることにも気づいて。ちっちゃいときに読んでいた絵本とか、アニメとか漫画とか、あんなに夢中になってたのにどんどん忘れていって、よりどころにしてるものもどんどん変わっていく。そう思ったときに、いつか全部なくなっちゃったらどうしようという不安が出てきて、それで「スタンドバイミー」ーー自分のそばにずっといてほしい、無理なんですけど、でもそう思わずにはいられない、ということを書きました。

“スタンドバイミー”MVより

ー<大人になんて なりたくないね>という歌詞がすごく象徴的ですよね。

廻花:子どものうちは大体のことは好きにやらせてもらえるけど、ダメなことはダメと言われるじゃないですか。でも成長して、だんだん好きにやらせてもらえるようになって、いずれ自分の判断でしかそれを決めることができなくなって、全ての選択が自分に降りかかってくる。そういうことは、実際にそれを経験した後にしかわからない。

私はイメージで言葉を書きがちなんですけど、映像という形でそれが見えたときに、また新たに自分の中で繋がった気がしました。自分だけじゃ絶対に思い描かなかった映像だからすごく印象的で。

山戸:子どもと大人の境界線上、線を引き切れない領域にあのシーンが存在していますね。

廻花:<大人になんて なりたくないね>っていう、自分が単純にそう思ったから言っただけのものに、リアルがのしかかってきて、また違う言葉の繋がりが生まれていることにすごく感動しました。

山戸:柔らかい心で受け入れてくださって、ありがとうございます。関連したところのお話だと、前半に「輪廻」や「生まれ直す」イメージについて言及しましたが、ストレートには赤ちゃんという具体性もその一つですし、あるいは大人しい見た目だった主人公の女の子が、自分で選択し変わっていき、その姿を変容させていく行為にもまた生まれ直しが秘められていて、それは誰しもが思春期や過渡期に直面・通過するノスタルジーでもあり、1作目にも2作目にも共通する要素ですね。その生まれ直しにおいて、「子どもと大人」を考えたときに、選択をすることの苦しみというのは、間違いなく若い頃の方にこそあるのだと思います。若くて、希望があって、あらゆる可能性に開かれているからこそ、一つを選んだ時には、それ以外の可能性が一斉に閉じてゆくような絶望もすぐ隣に息を潜めていて。逆説的な閉塞感に、無限の未来が限定されてゆく。そんな苦しみを思い出しながら、廻花さんのお話に共感・共鳴するところがありますね。

ー「選択」というのは花譜や廻花の活動もまさにそうですよね。でも実際は一方を選ぶとそれ以外が閉じられるわけではなく、可能性は開かれているし、連続性もある。

廻花:全部繋がってると思います。

山戸:廻花さんは、自分の問題に向き合う勇気があったからこそ、「あなたも頑張って」のような二人称的なメッセージが、今回の三部作にはまだ出てこなかった。誠実で、真摯な心のさらけ出し方だなと思いました。「自分の孤独が解決したのだから、あなたも孤独じゃないよ」と言う論法ではなく、偽らざるところ、自分の孤独はまだ張り詰めたままあるけれど、でも明日のために、今日は夢を見て眠るのだという。解決しきらない途上のものを差し出す勇気というか、10代でこの歌を作られたのは、選択の結晶ですよね。

既に、たくさんの人が見てくれている中で、10代の心をさらけ出した歌を歌うことは、ゼロからのスタートとは全く違う重圧があったと思うんです。どの歌も、痛みを抱えたまま終わっていることが素晴らしいのだと思う。「生まれ直し三部作」と言いながら、生まれ直しても、決して痛みがなくなるわけじゃない。廻花さんと対話をする中で、映像を作りながら逃れられずにあった痛みの響き、今日その源をすごく感じました。

ー現在の廻花さんはお客さんの前で歌ったり、お客さんが自分の存在を受け入れてくれたことを経験しているわけですが、今後廻花の歌詞が二人称的なものになるというか、他者のことを思って歌うような表現の方向性も出てくると思いますか?

廻花:山戸さんに映像を作っていただいた3曲は自分のことを書いてるんですけど、1月の代々木のライブで発表するために書いた“かいか”では<きみ>と歌っていて。誰かを救うとか、そんな大層なことは考えたことがないけど……でも自分のことを見てくれる人たちを想像して作ったものと、そうじゃないものは全然違うというか、伝えたい人が明確にいるのは、曲を書くモチベーションが全然違うなと思いました。でもやっぱり自分のために作ってた時間の方が長いので、これからどうなっていくのかは……まだわからないです。

山戸:誠実でいるということが、一番難しいことだと思うので、今「わからない」と言い切る姿に、純真さ、磨かれた純粋さを感じます。今日お話をしながら、花譜さんとしての表現と、オリジナルの自分の日常生活との往還を生き抜いた時間があったからこそ、廻花さんが生まれたということに、過去に対しても、未来に対しても、必然を感じました。これからどんな選択をされても、苦しみを表現として花咲かせる術をご自身で手繰り寄せて、つかまれてゆくと思う。「昇華」の「か」は、「華」で「花」だから。花譜さんなのか、廻花さんなのか、もしかしたらまたいつか新しい女の子に出会えるのか、どうあっても新しい歌声に昇華されていくんだろうなって、美しい未来しか予感されないです。廻花さんの歌が純粋なままで遠くに届けられるように、反響する道筋の一つになりたいと心から願っているので、純粋さを純粋なままで受け取れるように自分も生きていこうと思いました。

廻花:歌を作るときは、自分がダイレクトに抱いた思いからは結構形が変わるというか、自分が思ったことが結晶みたいにギュッてなるから、それをこんなふうに受け取ってもらえるのは本当に嬉しいです。自分が大切にしていること、「ありのまま」ともまた違うけど……わからないならわからないと言うとか、その場しのぎで何かを決めることはせずに、山戸さんからもらった言葉を大切にして、これからも活動を続けていきたいと思います。

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