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廻花が語る1stアルバムとこれまでの軌跡。才能豊かなソングライターの萌芽

2025.3.28

廻花『うまれるまえからきみをしってる』

#PR #MUSIC

Base Ball Bear小出からの学び(と攻防戦)

―そういうテーマも含めて、実際に曲を作るにあたって小出さんとはどういうやり取りがありましたか?

廻花:自分は立ち会えなかったんですけど、小出さんが声をかけてくださった豪華すぎるメンバー(※)に録音していただいて。たぶん同じ空間で録ったんだと思うんですが、衝動が音になっているみたいで、すごくそれに感動しました。あとこの曲は自分もバッキングギターを弾かせてもらったんですけど、どんなレコーディングよりも時間がかかったんじゃないかなって(笑)。

※中尾憲太郎、キダ モティフォ(toricot)、高橋武(フレデリック)

―小出さんから「ギターを弾いたら?」みたいな提案があったわけですか?

廻花:はい、そう言ってくださって、ギターをお借りして。私はコードって、「指がこういう形をしたらこういう音」みたいに覚えてきたんですけど、小出さんはギターマンだから、どこを押さえたらどういう音っていうのを指板の中で自由自在に選べる。それを目の当たりにして心から良いなーー!!! って思いました(笑)。あと歌い方に関して、花譜ではずっとエンジニアさんと2人で、自分の納得いくまでやるみたいなレコーディングの仕方が多いんですけど、今回小出さんに自分が一生懸命歌ったテイクを聴いてもらったら、「一回30%くらいで歌ってみてほしい」と言われて。

―力を抜いて歌ってみてほしいと。

廻花:花譜は担当が歌唱だけだし、そこに価値を見出してくれてる人が歌を聴いてくれたり歌を頼んでくれるので、歌に自分の思いをしっかりのせられるよう全出力してきたんです。でも小出さんに「感情全開の歌い方を聴いて、疲れる人もいる」みたいなことを言われて確かになと思ったし、ある程度確立されてきた自分の歌い方を改めて見つめ直す機会になりました。例えば<洗濯物ゆれた 屋上見惚れてたら どっからか夕飯の匂いだ>っていう歌詞があって、最初は自分の思い通りに歌ったんですけど、小出さんに「これだとカレーの匂いがする。この夕飯が何かは聴き手に委ねてほしい」って言われて。

ーなるほどなあ、面白い意見ですね。

廻花:でも小出さんがいいって言った一つのテイクを自分は納得ができなくて、攻防戦みたいな(笑)。結局自分が「こっちがいいです」って言ったテイクにさせてもらったんですけど、さっき言った「30%に落として歌ってみる」みたいなことは1人だったら絶対やらなかったし、その歌い方は自分も好きだなと思って、それは大きい発見でした。すごくいい経験になりました。

―“東京、ぼくらは大丈夫かな”は不安や焦りが背景にあるんだけど、でもそれを衝動のある、軽快なバンドサウンドで歌う、その組み合わせの良さもすごくありますよね。

廻花:まさしく、そうですね。やっぱり音がめちゃくちゃかっこよくて、自分はこれまでバンドをいっぱい聴いてきたけど、声とか歌だけじゃない、鳴ってる音全部でその衝動を表現してるみたいに感じられる曲が大好きで。“東京、ぼくらは大丈夫かな”も小出さんのお力によって、そんな曲になったと感じています。

―逆に“はかいのうた”は<時限爆弾 わたし>みたいな、ギョッとするような言葉を使ってるんだけど、でも曲調はローファイヒップホップというか、ちょっとチルな感じで、「この曲調でこの言葉を歌うんだ」っていう面白さがありました。

廻花:確かに。自分の中で「こういう曲調」っていうのと「こういう言葉」っていうのが別々にあるのかもしれない。

“はかいのうた”に関しては、自分は怒るのがすごく苦手なんですけど……このときはずっと怒ってたんです。でも誰も悪くないから、誰に言えばいいかもわからなくて、疎外感を感じて、電車に乗ってても急に涙が出てきたり、「全部滅べばいいのに」って思ったり。でもそういう人に言えない破壊衝動みたいな気持ちって、1回寝たら案外忘れちゃったりするんですよね。<明日には元通りだよ>っていう歌詞があるんですけど、ウルトラマンの敵が街を破壊したとしても、次の週には元に戻ってるじゃないですか? そういうイメージで作った曲です。

―直接口では伝えられないことが歌詞になっているという意味では、今も“ひぐらしのうた”の頃から根本は変わってないのかもしれない。

廻花:そうですね。“ひぐらしのうた”も少し前に作った曲で、この時は自分で「大人」っていう線を周りの人に対して引いてたし、その立場に甘えてた部分も多かったと思うんです。それもあって接し方がわからなかったけど、それから上京をして、自分自身も少し大人になって、この1〜2年くらいでやっと自分が言いたいことが言えるようになったかなと思います。

―小出さんともバトルをしたわけですもんね(笑)。あと“ターミナル”は初ライブからずっと披露されてきた曲で、音源化を待ってた人も多かったと思います。

廻花:“ターミナル”はSNSを見て、閉塞感がめちゃくちゃたまったときにできた曲です。誹謗中傷で亡くなった方がいて、でも少し経ったらみんな忘れて、過ぎ去っていっちゃう。そういうことに対する違和感みたいなものがすごくあって。1つニュースがあって、それが終わって、次の場所へ、また次の場所へって、自分も含めて、「みんなどこに行きたいんだろう?」っていう曲になりました。

―そういう内省的な感情がエモーショナルかつ美しい曲に昇華されてるのも素敵ですよね。

廻花:“ターミナル”はすごく好きだと言ってくださる方が多くて嬉しいですね。

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