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アルバムの背景にある、学生から大人になっていく中での不安や戸惑い
―弾き語りや簡単な打ち込みで作った曲を、自分のイメージとすり合わせながらアレンジャーさんと編曲していく作業は楽しいことでもあるし、自分のイメージをどう伝えるかの難しさもあると思いますが、今回アルバムを作ってみて、どう感じましたか?
廻花:アレンジをしていただくときは、「こういう雰囲気がいい」「こういう音が鳴ってたらいい」みたいなリファレンスを送らせてもらうんですけど、それをめちゃくちゃくみ取っていただいて、自分が想像してたよりもすごくいいアレンジをしていただいた曲ばっかりで。例えば“初恋”は、自分ではシューゲイザーのイメージだったのが最終的に環境音楽に近くなったんですけど、この岡本剛さんにしていただいたアレンジが私は本当に大好きで。自分の想定してたものとは全然違うけど、自分の中になかった発想だったからこのアルバムに収録することにして本当によかったなと思いました。“白夜、揺れる命”はIsao Sudoさんにアレンジをしていただいたのですが、白夜の曲だから、「氷っぽい、冷たい音を入れてほしいです」みたいなすごい感覚的な言葉でお伝えするしかできなかったのですが、「まさしくこれです!!」という空気感になって……本当にすごいなと思いましたね。
―“東京、ぼくらは大丈夫かな”はBase Ball Bearの小出祐介さんのプロデュースですね。
廻花:小出さんがフィーチャリングで参加してる岡村靖幸さんとの曲だったり、あと南波志帆さんや花澤香菜さんに提供した曲がすごく好きで。べボベの曲でも花澤香菜さんが参加してる“恋する感覚”とか、女性が歌う小出さんの曲がめちゃくちゃ好きです。
―歌詞のテーマはやはり上京ですよね。
廻花:そうですね。以前は東北に住んでいて、月に2回とか新幹線で来るみたいな感じで、全然土地勘もなかったんですけど、東京に住み始めて、どこに何があるかとか、どういう人たちがそこにいるかがわかってきて、人混みにも慣れて、初めて来たときにどんなことを思ってたかも朧げになったときに……「大丈夫かな?」と思ったんです。
―東京に慣れてきたことに対する不安感ですか?
廻花:というより、自分が大人として扱われるようになったことについて、「大丈夫なのかな?」と思ったことがきっかけですね。1人で生活をするようになって、誰かに何かを指示されたり、怒られたりすることもなくなってきたので。

―以前“スタンドバイミー”について、「成長していく中で、小さい頃に拠り所としていたものが全部なくなっちゃうんじゃないかという不安から生まれた曲」と話してくれましたが、今回のアルバムは学生から大人になっていく中での不安や戸惑いが大きな背景になっていると言えそうですね。
廻花:そうですね。この曲は自分の中では朝のイメージなんですけど、友達と朝まで遊んで、帰りに渋谷を通ったときに、普段は人でいっぱいのスクランブル交差点に全然人がいなくて。そういうのも見れるようになったっていう喜びもあるし、いろんなことを積み重ねる中で楽しいこともあって、「ぼくらは大丈夫」とも思うけど……それがずっと続くものでもないってことは分かってて、「本当に大丈夫なのかな?」と思ってる自分もいます。だから最後は「大丈夫かな」って言って曲を終わらせることにしました。