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「盆栽の聖地」さいたま発。ローカルの価値を見つめ直すアートプロジェクトをレポート

2025.4.2

空想するさいたま

#PR #ART

盆栽は「眠れる記憶」の集積だ

—今回の『Sleeping Memory』もそうした観点から発想されたのでしょうか?

ズヴォリンスキー: 『Nature Communications』誌に載っていた、埼玉大学の新しい研究(※)が創作のヒントになっています。それによると、植物は何か危ないことがあったとき、植物同士でその情報を共有しているようなんです。情報を、送るだけじゃなくて貰うこともできる。まさにコミュニケーションですね。

※Aratani Y., Takuya U., Hagihara T., Matsui K. & Toyota M. (2023). Green leaf volatile sensory calcium transduction in Arabidopsis. Nature Communications, 14.

—植物が「会話」している?

ズヴォリンスキー: はい。そこで私が考えたのは、植物から植物だけではなくて、植物から人間に何かを伝えているとしたら、どんなイメージになるかな? と。植物の伝達方法を人はそのまま理解はできませんよね。それをアブストラクトアートとして、表現できそうだなと考えたんです。最初は音のイメージがあって、そこからビジュアルのコンセプトが生まれました。

—インタラクティブな仕掛けにしたのは?

ズヴォリンスキー: 記憶を作るにはインタラクション(関わり・相互作用)が必要ですよね。それがないと記憶にならない。人間と盆栽の間にはコミュニケーションがあります。形を決めて枝を曲げるとか、光を当てるとか……職人が盆栽に話しかけているかもしれないですし。盆栽は耳がないから人間のように聞こえてはいないけれど、音の振動は感じ取ってるかもしれない。それで、短い時間ではあっても、こうやって見る人が直接デジタル盆栽とコミュニケーションできたら面白いんじゃないかと考えました。

—なるほど。確かに盆栽は、ご自身の創作のテーマと近いかもしれませんね。記憶の集積というか……。

ズヴォリンスキー:本当にそうです。自然のままに育っていると、植物はこういう形にはならないですよね。でも盆栽は人とのコミュニケーションの中で形を変えて、丁寧に扱えば100年も200年も生きていく。私は盆栽の中に「眠れる記憶」があるとイメージしています。

—盆栽については、もともと知識がおありだったんでしょうか?

ズヴォリンスキー: そんなに詳しくは知らなかったですが、2021年くらいに、インターネットでレクチャーを受けたことがあります。日本の伝統的な文化に興味があって参加したもので、盆栽の他にも、お茶とか日本画について知りました。その中でも、盆栽は一番印象が強かったかもしれません。この芸術は時間とともに変化していくし、見る角度によっても変わるし、本当に面白い。

—盆栽も、音楽と同じように、時間芸術のような面があるのかもしれませんね。

ズヴォリンスキー: ええ、そうですね! ここにある梅の盆栽も、この1週間でとても変わってきました。初めは花がひとつしかなかったんですけど、今ではこんなに咲いてきた。茶の湯などもそうですが、作品の四季による変化を楽しむというのは日本ならではかもしれませんね。

今回の展示にあわせて大宮盆栽美術館から借り出されているという梅の盆栽。毎日、職人さんがお手入れに来ているそうだ。やっぱり人と盆栽はコミュニケーションの密度が高い。

ちなみに現在は尺八も練習中というズヴォリンスキー。“さくらさくら”くらいなら吹けるかな? と笑顔で語ってくれた。

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