INDEX
「無尽」から考える『ホットスポット』が描くテーマ

テレビディレクターである岸本が上司の新座良幸(眞島秀和)に、自身の番組企画として富士浅田市をプレゼンする時に出てきた、気になる言葉「無尽」。これは「貯金会」とも呼ばれる、実際に山梨県に古くからある助け合いコミュニティの風習。特定のメンバーで集まって食事や飲み会をし、その時に食事代とは別にお金を出し合って積み立て、冠婚葬祭などの特別な時に使ったりするそうだ。第7話で清美の娘・若葉(住田萌乃)が、清美の別れた夫・田中晋平(大倉孝二)に話していたように、清美やはっち、みなぷーとの集まりも「貯金会」にあたる(作中で金銭的なやりとりはあまり描かれていないが)。
『ホットスポット』が描こうとしているテーマは、この「無尽」が象徴するような、助け合いの文化にあるのではないか。
高橋は、今までにも、清美やはっちの困りごとを解決し、小学校の校庭への落書き犯、コンビニ強盗犯、自転車泥棒を撃退してきた。富士浅田市に貢献していると言ってもいいだろう。第9話では、そんな高橋を救うために、高橋にとってのホットスポットと言えるレイクホテル 浅ノ湖が売却されるという危機を回避するべく、綾乃の夫で市役所職員の信一(田村健太郎)や清美たちの同級生で弁護士の蓑田賢治(前野朋哉)に助言をもらうなど、清美たちは動き出す。ドラマ全体を通して、助け助けられという互助の精神が描かれているのだ。

高橋が長い間、宇宙人ということを誰にも告げずに生きてきたということもポイントだろう。第8話で明かされた高橋の過去。優しい母・弘子(安藤サクラ)と宇宙人である穏やかな父・恭介(野間口徹)に育てられた高橋は、父の言いつけを守って、宇宙人の能力を使わずに生きてきた(大学受験を除いて)。幼なじみにも話すことができない秘密を抱えながら生きてきた高橋には、どこか拭えない孤独感があっただろう。そんな中で、秘密を開示しても普通に接してくれ、現状を打開しようと動いてくれる清美たちに高橋は救われた面もあると思うのだ。
仕事をサボりがちだったり、変に見栄を張ったりという、高橋の欠点を理解した上で、清美たちと高橋の間で結ばれた連帯は、一種の理想の形と言えるだろう。第9話では、ホテルのオーナー・原口芳恵(筒井真理子)の部屋に忍び込む高橋を応援するべく、清美、葉月、美波、綾乃、由美、瑞稀らが集まる。事前には「行けたら行く」と言いつつも、当日は集まってくれたみんなを見て、ちょっと嬉しそうな高橋の表情には、心が温まった。