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さよなら名機「Heritage 3000」 PAエンジニアの巨匠たちが語るライブ音響の世界

2024.12.26

#MUSIC

2010年のオープン時から約15年にわたり渋谷のライブスペースWWWのサウンドを支えてきたPAコンソールMIDAS Heritage 3000が、同店のシステム変更に伴い「卒業」することになった。Heritage 3000はイギリスの音響機器メーカーMIDASが1990年代末に発売したアナログコンソールで、優れた音質とユーザビリティで世界中のエンジニアやミュージシャンを虜にしてきた名機だ。しかしデジタルコンソールが主流の現在では、アナログコンソールを常設するライブハウスは少なくなり、それに伴い今やHeritage 3000を常設している日本のライブハウスも希少だという。

こうした背景を受けて、WWWは2025年1月5~13日に『WWW presents “Heritage 3000” Farewell series』と銘打ったライブシリーズを実施する。OGRE YOU ASSHOLE、MERZBOW、寺尾紗穂、七尾旅人、マヒトゥ・ザ・ピーポー、Minami Deutsch(南ドイツ)、おとぼけビ~バ~、FLATTOP feat. 内田直之、柴田聡子といった面々にHeritage 3000の卒業を彩ってもらおうという趣向のイベントで、Heritage 3000のサウンドを体感することができる貴重な機会になりそうだ。

本稿では「Heritage 3000はなぜここまで人を魅了するのか?」から「優れたライブの音響とは?」までを探るべく『”Heritage 3000″ Farewell series』にも参加する内田直之、佐々木幸生、Dub Master Xという3名のPAエンジニアたちに話を聞いた。日本を代表するPAエンジニアたちによる「PA話」の数々、ぜひ楽しんでほしい。

日本のライブ現場を作り上げてきたPAエンジニアたちの歩み

ーこのインタビューはWWWのHeritage 3000の卒業をきっかけにしたものですが、せっかく皆さんが一堂に会する貴重な機会なので、PAやライブの音響に関するお話を幅広く伺えればありがたく思います。皆さんキャリアはそれぞれですが、PA歴となるとどのくらいになるのですか?

DMX:俺は20歳からやっていて、年明けに62歳になるから……もう42年? 嫌になるよね(笑)。さんちゃん(佐々木)も同じくらいでしょ? 学年が一緒だから。

佐々木:自分は22歳で会社(佐々木が現在代表を努めるPAカンパニーの株式会社アコースティック)に入ったので、40年やっています。

佐々木幸生(ささき さちお)
株式会社アコースティック代表取締役。YMO、サカナクション、羊文学、カネコアヤノ、坂本慎太郎、OGRE YOU ASSHOLEなどを手がける。音楽ジャンル、メジャー、インディーズの分け隔てなくライブハウスからスタジアムまで縦横無尽にLIVE MIXをする。

内田:僕は20歳の頃、レコーディングスタジオでバイトを始めたんです。だからレコーディングが最初で、PAをやることになったのは、当時レコーディングを担当していたDRY & HEAVYってバンドに「お前、PAやれ」って言われたのがきっかけです。それが25、6歳くらい。PAに関する知識が本当になかったので、「無免許運転」のようなものでしたね。

内田直之(うちだ なおゆき)
1972年埼玉県狭山市出身。1992年よりレコーディングスタジオに勤務し、録音技術を学ぶ。その傍ら日本のRoots Rock Reggaeバンドの草分けであるDRY & HEAVYのDUBエンジニアとして活動を始める。メンバーとしてバンドに参加しライブを重ねていく中で、独学でライブPA技術を身につける。LITTLE TEMPO、OKI DUB AINU BAND等、複数の国内DUBバンドにメンバーとして参加し、日本のDUB MUSICを発展させるべく、日々研鑽を重ねている。

ー皆さんの仲が良さそうな雰囲気が伝わるのですが、知り合ったきっかけは?

内田:僕から話しますね、一番年下なので(笑)。僕、若い頃にMUTE BEATの大ファンで、宮崎(DMX)さんがアイドルだったんです。

DMX:やめなさいよ(笑)。

内田:学生の頃、本当にめっちゃ聴いていて。ダブという音楽も、MUTE BEATがいなかったら知らなかったくらい。ライブは観れなかったけど、レコードを死ぬほど聴いていました。宮崎さんは本当にパイオニアですよ。

DMX:パイオニアだったことは間違いないね。でも、たまたま古くからやってただけの話だから。俺はレゲエのダブを極めようしていたわけじゃなくて、音響効果としてダブの要素が好きだったんだよね。それをやったのが、たまたまMUTE BEAT。みんな俺のことを日本のキング・タビーとかリー・ペリーとかマッド・プロフェッサーとか言うけれど、実はその辺りには傾倒してない。どちらかと言えば、スティーブン・スタンレーとかアレックス・サドキンとか、ダブのエッセンスをポップス、ロック、パンクに持っていった人たちに興味があったから。だから、今やレゲエのダブはウッチー(内田)のほうが極めてると思うな。

Dub Master X(ダブ・マスター・エックス)
1963年生まれ、札幌出身。本名は宮崎泉。高校卒業後上京し専門学校で音響工学を学んだ後、今はなき伝説のクラブ「ピテカントロプス・エレクトス」にミキシングエンジニアとして入社(1983年)。ダブエンジニアとしてMUTE BEATに参加したほか、DJやPAとしても活躍。1990年代からは藤原ヒロシ、朝本浩文らと共同制作でリミックスやアレンジを数多く手がける。

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