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表向きには「選択肢」を用意しているが、結局は支配している
リードの言説には「どの宗教も反復である」「2人が信じる神も茶番だ」という乱暴なものもある一方で、ボードゲームの「モノポリー」やロックバンドの「Radiohead」といった具体的な例を用いての解説はわかりやすく、一理あるとも思えてしまう。ヤバいやつなのは間違いないのに、その言葉には確実に正論も含んでいる、なんなら物事の本質を突いているように思えることも、彼の話につい耳を傾けてしまう理由だ。
そして、リードが主導権を握る様は、「『信仰』と『不信仰』と書かれたドアのどちらかを心に従い選べ」と迫るシーンで、さらにはっきりと表れる。表向きには「選択肢」を用意しているわけだが、それ以前に「選ばなければならない」状況を生み出しているのは他ならぬリードだ。結局彼は、独善的な言葉で相手を支配しているし、そのドアの先にあった衝撃的な光景や事実、彼の言う「真なる唯一の宗教」は、その欺瞞やおぞましさをさらにはっきりと映し出すことになる。
総じて、本作は宗教を題材として描いているが、宗教そのものを貶めたりはしていない。問題となるのは宗教そのものではなく、「宗教の教義を利用して誰かを罠にはめて人生を破壊させる」ことだ。日本でも、その恐ろしさが他人事ではないというのは言うまでもないだろう。同時に、男性が女性を無知だと見下し、一方的に知識をひけらかし、価値観を押し付け、高圧的な態度を取る、いわゆる「マンスプレイニング」の問題もはっきりとわかるはずだ。
