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クリトリック・リスからBiSHまで。自分が作りたい本を作るために会社を設立
タカノ:もともと西澤さんは、出版社で勤務されていたそうですね。
西澤:はい。老舗の楽譜集などを制作していた出版社で、営業や在庫管理をやっていました。だから心の隅で、編集をやりたいと思いながら勤めていましたね。
Celeina:『OTOTOY』(音楽配信サイト)での勤務を経て、2017年に株式会社SWを立ち上げられました。ご自身で会社を立ち上げた理由を教えてください。
西澤:自社で、本を作って出したほうが早いと思ったんですよね。さっきのキャバクラのおじさんの小説も、会社に入って企画を出したら多分通らないはずです。そして、僕が一番最初に作りたかったのが、ミュージシャンのクリトリック・リスさんの自伝本でした。彼は当時50歳で「ハゲ!」とお客さんから野次られながらもパンツ1丁でライブをやっている、エモーショナルな人だったんです。でも、きっと普通に「この人の自伝本を作りたいです」と言っても、すぐにできないだろうという思いもありました。
Celeina:でも、一番最初に作りたいと思ったその自伝本は、いまだに出せていないんですよね?
西澤:そうなんですよ……。会社を立ち上げて6年経つんですけど、まだ出せていません。というのも、取材をしている中で、彼が50歳の時に、日比谷野音でワンマンライブをやりたいという話になったんです。日比谷野音は抽選で当たらないと会場が使えなくて、法人じゃないと抽選に応募できない。そこで、うちで応募したところ、200倍ぐらいの確率で、まさかの1発で当たっちゃって。そこから、お客さんを集めるために1年かけて音源をリリースしたり、イベントをしていったりして、日比谷野音のワンマンライブはなんとお客様が2000人も集まったんですよ。でも、そこで満足しちゃって、本の制作が止まっています(笑)。
タカノ:ちなみに株式会社SWが最初に出したのは、どんな本だったんですか?
西澤:最初はBiSHが所属していたWACKという事務所にいる、アイドルグループを撮影した『IDOL』という写真集を2019年2月に出しました。
Celeina:どういった経緯で出すことになったんですか?
西澤:WACK代表の渡辺さんとは、彼がWACKを立ち上げる前からの仕事仲間であり、飲み友達で、週4~5回のペースで飲んで、ああだこうだ話をする仲でした。お互いに独立して、色々とやり始めたところで、「何かやりたいね」という話になり、当初はBiSというアイドルグループの写真集を作ろうと計画したんです。BiSが47都道府県を回るから、それを撮影しようと。でも、30ヶ所を回ったあたりで、カメラマンのそってぃ(外林健太)さんが「うーん」と浮かない顔をしていて、「納得がいっている写真は何枚撮れたんですか?」と聞いたら、「1枚」と言われたんですよ(笑)。
Celeina:30ヶ所を回った後にですか?
西澤:そうなんです。だったらBiSだけじゃなくて、BiSHや他のグループも範囲に入れて、彼女たちの綺麗な部分じゃなくて、楽屋裏の部分だったり、アイドルの普段見せない部分も収めた写真集にしようということになりました。そういう経緯で出したのが、『IDOL』という写真集です。
Celeina:自伝本の時もそうですが、目的が変わっても、西澤さんが常に状況を聞きながら進めている感じがします。そういったところも、大事にされているのでしょうか?
西澤:できるだけ相手に寄り添いたいとは思いますが、でもどうしようもないというところもあります(笑)。あと、渡辺さんをはじめ、周りの方がフレキシブルにアイデアを出してくれることも大きいです。
タカノ:では、ここで1曲お届けしましょう。西澤さんにこの時間にラジオでみんなで一緒に聴きたい曲を選んでいただきました。どんな曲でしょうか?
西澤:僕が最近知り合って注目している、ALL INc.という会社が運営しているLiVSというアイドルグループです。運営陣がほとんど20代の子達で、運営を始めて半年ぐらいなんですけど、新しいことや面白いことをしようとしているのがとてもよくて。その楽曲を聴いていただきたいです。LiVSで“ONE”。