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全てを捨てて制作した『Bleach』と、こだわり続けるYouthというキーワード
ー作品についても話を聞かせてください。まず今回、日本のインディレーベルの老舗「P-VINE」内のK-ALTから『Bleach』の日本盤がリリースされましたね。
ヒョッキ:いつも話してたよね、いつか日本でもリリースしたいなって。
ジュンワン:うん。韓国はCDやバイナルなどのフィジカルの市場が小さいように感じていて。自分たちはサブスクリプションやデータではなくCDを聴く世代だったから、フィジカルがどれだけ大事なものかを理解しています。日本はまだフィジカルの販売市場があるしリスナーもいるから、いつか日本盤をリリースしたいなって話をいつもしていました。今回、タイミングよくこのような機会をいただけて有り難いです。
ジェイボ:P-VINE最高だ(笑)。

カルト的な没入感を持つ韓国(Korea)のオルタナティブ(Alternative)なアーティストたちをサポートするため、日本の老舗レコード会社・P-VINEが2024年に立ち上げたシリーズ。これまでにGlen Checkのほか、日英韓トリリンガルR&BシンガーのJiselle、DJ / エレクトロニックプロデューサーのswimrabbitの作品をリリースしており、11月20日(水)には韓国R&B界で注目を集める新鋭シンガーのOtis Limの1stアルバム『Playground』、12月4日(水)にはスムースで心地良いインディーミュージックを鳴らすorange flavored cigarettesの1st & 2nd EPが2in1作品としてリリース予定。
https://anywherestore.p-vine.jp/collections/k-alt
ーGlen Checkの音楽はエレクトロポップ、シンセポップなどサウンドの軸はありつつ、作品によって雰囲気はガラッと変化しますよね。一つのジャンルに囚われない自由さが魅力的だと思っているのですが、その中でも『Bleach』は今までのダンサンブルなアプローチよりも、やや内向的な印象を受けます。前作のアルバム『YOUTH!』から『Bleach』発表まで、約9年間と空白の期間も長かったと思いますが、そのような時間も関係しての作品スタイルなのでしょうか。
ジュンワン:そうですね。音楽を作っていくと知識やスキルが身についてくるじゃないですか。それらに囚われすぎて、「こうやったら、次はこうしよう」みたいなルールに縛られてしまっていたので、それを全て捨てて、もっと自由に音楽を作ってみたいと思ったんです。時間はかかってしまったんですけど、そうして出来上がったアルバムが『Bleach』でした。
ーアルバムに収録されている”Dazed & Confused”と”4ever”は、今年になってNetflixの恋愛リアリティショー『ボーイフレンド』の劇中歌として日本で話題となりました。皆さんにその反響は届いてましたか?
ジュンワン:「そうなのかな?」と思ったのは、Spotifyの再生数がグンと伸びた時ですかね。驚いた記憶があります。
ーYouTubeにアップされている”Dazed & Confused”のMVには、「『ボーイフレンド』の世界観とぴったりすぎる」「選んだ人のセンスがすごい」など多くのコメントが書き込まれています。タイトルの「Confused」は「混乱する」という意味ですが、どういう思いを込めて作った曲なのでしょうか。
ジュンワン:私たちにとってこの曲はYouthを意味します。考えすぎて混乱をし、もう何が何だか分からない! という瞬間に起こる感情の揺らぎが「Youth」。Youthという言葉の中で、いつも一番重要だと思っていることは「考えすぎない」ということです。
ーそのYouthという感覚を含め、歌詞は実体験を元に書かれているんですか?
ジュンワン:パーソナルな経験談を盛り込むよりも、経験から得たインスピレーションを込めてストーリーを作り上げています。歌詞は曲を聴く人たちにシェアするものなので。

ー「Youth」は過去にアルバム名としても使われていますが、昔からずっと変わらないメッセージなのでしょうか。それとも『Bleach』でより強くなった思いなのでしょうか。
ジュンワン:アルバムごとに伝えるスタイルは異なりますが、核心的な部分……Youthが含む青春という意味であったり、一度考えを捨てよう、リセットしようみたいなメッセージは変わらないですね。
今の若い世代の方たちもそうですが、考えすぎる場面がとても多い。それが良い方向に結びつくこともありますが、思考をリセットすることで得ることもあると、自分たちはYouthとともに知ることが出来たので、「時には何も考えないで」といつも伝えているつもりです。
ー青春とは悩むこと、みたいな感じでしょうか。
ジュンワン:そうですね。でも考えすぎるだけが青春じゃない。心配や悩みがないこともある。その境界線でいつも悩んで揺れ動く瞬間が美しいんだと思います。
ージュンワンさんも悩むことは多いんですか?
ジュンワン:若い頃はとても悩みが多かったです。未来についてだったり、生活についてだったり、『Bleach』の時で言えば兵役もあって個人的に暫く活動期間を空けないといけない時だったので、時間についての悩みであったり。でも、『Bleach』以降は悩まなくなったように思います。悩みを全部捨てよう、漂白しようという意味として、『Bleach』というタイトルにしましたし、このアルバムは自分の人生でとても大事なポイントとなる作品になりました。
悩みって尽きないじゃないですか。自分とヒョッキは国際高校に通っていたんですが、大学受験など色々なことにストレスを受けていました。当時は「どの大学に行けばいいんだ?」「どこなら安泰なのか?」などの話が出ていて、そこから自分が外れるとなんだか怖くなったりもする。でも、いつだって何かしらの悩みはあるんだから、そればっかりに囚われず、考えないでやってみることも大事だなと思うんです。

ー歌詞を書く時は、ヒョッキさん、ジェイボさんともお話しされるのでしょうか。
ジュンワン:ヒョッキとはアイデア出しとして沢山話をしますね。
ーヒョッキさんは一緒に過ごしている時間が長いと思いますが、歌詞についてはどう感じていますか?
ヒョッキ:『Bleach』を作る前と後の心境の変化は理解していたと思うし、歌詞の内容にも深く共感していました。でも、実際に「考えを捨てる」ことは、言葉にするのは簡単ですけど、すごく難しい作業なんです。今も努力している最中です。
ジェイボ:ヒョッキさんが一番考えるタイプなんです(笑)。
ヒョッキ:何かをするときに、頭で考えることが一番多いタイプかもしれない(笑)。
ーでも実際、皆さんが悩みながら作っているからこそ気持ちが伝わる曲ができているんだと思います。Glen Checkの音楽に触れると、Youthというワードが浮かび上がって自分の中に入っていく感覚があったので、お話を伺ってとてもしっくり来ました。
ジュンワン:僕らも歳をとりましたが、心にはいつもYouthを持ち続けていると思っています。
