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因習村×バイオレンスドラマ『ガンニバル』が世界水準である理由

2025.3.19

#MOVIE

2022年にディズニープラス「スター」の日本発オリジナルドラマとして配信されたヴィレッジサイコスリラー『ガンニバル』。閉鎖的な村を舞台に繰り広げられるミステリーやアクションもさることながら、話題を集めたのは狂気の主人公・阿川大吾を演じた柳楽優弥の怪演だった。3年の時を経て公開されるシーズン2で、この物語はどう展開していくのか。完結編と銘打たれた本作を、ライター・長内那由多がレビューする。

壮絶なクリフハンガーで終幕したシーズン1に続く、待望の続編

中国地方の何処か、わずかな人口の限界集落・供花(くげ)村に新たな駐在として、柳楽優弥演じる警察官の阿川が赴任してくる。緑豊かな自然に囲まれ、穏やかな人々が暮らすこの村で、妻と幼い娘、家族3人の新たな生活を送ろうとしているのだ。しかし、前任者は謎の失踪を遂げており、村人たちは笑顔の裏で大地主の後藤家を恐れている。間もなく行われようとしている村祭は、子どもを生贄にした古来の食人風習を伝えており…。

あなたは供花村に戻らなくてはいけない。二宮正明による同名漫画を原作としたTVシリーズ『ガンニバル』の完結編、シーズン2がいよいよ配信される。ストリーミングプラットフォームの隆盛以後、英語圏以外で製作されたTVシリーズが世界規模の大ヒットを記録することは珍しくなくなったが、ハリウッドがパンデミックとストライキを経て製作能力に衰えを見せる中、2025年はNetflixの『阿修羅のごとく』、そして『ガンニバル』シーズン2ら日本作品が現時点のベストと言っていいだろう。

供花村の狂気に巻き込まれる阿川の一人娘、ましろ

本作の面白さはホラーの人気ジャンル「因習村モノ」の扱い方にある。都会からやってきた主人公が一見、親切な村人たちと接しているうちに、やがて古くから伝わる恐ろしい因習を知る……。本作ではカニバリズムという禁忌と、排他的な住民の集団心理が恐怖を呼ぶが、従来であれば巻き込まれ、次第に精神を蝕まれるであろう主人公が、初めから“狂っている”ことに定番を覆す醍醐味がある。原作漫画でも阿川の秘められた暴力性は示唆され続けるものの、演じる柳楽はほとんど狂犬のような獰猛さ。素晴らしい身体性による突き抜けた暴力警官ぶりが、狂気の村人を圧倒する様に異様な快感があるのだ。

シーズン1で阿川大吾の妻・有希を好演した吉岡里帆

メインから脇役まで、画面を埋め尽くす強烈なキャラクターたち

新シーズンで驚かされるのは、そのバイオレンスアクションのスケールアップだ。供花村と食人の謎については前シーズンで多くが明かされているため、解決編となる今回は巻頭からアクションシークエンスが大幅増強。メインディレクターを務める片山慎三はポン・ジュノ作品の助監督を務めたキャリアの持ち主。水を開けられて久しかった韓国バイオレンスアクションに、日本作品がついに肉薄したと言っても過言ではない。バリエーションの豊富さはもちろんのこと、とりわけ中盤の一大シークエンスに筆者は思わずうめき声が漏れた。

アクションでも見せ場の多い後藤家の人々

物語が佳境に突入する今回、登場人物それぞれのディテールが掘り下げられ、柳楽を筆頭とした演技陣にも多くの見せ場が与えられている。後藤家の頭領、恵介を演じる笠松将は柳楽と対称的な静の芝居。善悪の狭間で揺れ動く繊細な心理演技は観る者の心を揺さぶり、『ガンニバル』が実質上、柳楽と笠松のツートップ主演であることを証明している。笠松といえば1990年代後半の東京を舞台にしたハリウッド作品『TOKYO VICE』でのヤクザ役も記憶に新しいところ。またしてもグローバル作品でのブレイクスルーとなった。

笠松将演じる後藤恵介は自身の優しさと後藤家の因習の間で葛藤する

他、曲者だらけの供花村の住人に山下リオ、六角精児、そして後藤家随一の巨体を誇る岩男を演じた吉原光夫ら演技巧者が名を連ね、サポーティングアクトがぬめり光る。

新キャスト恒松祐里が演じる若き日の後藤銀は、供花村に狂気のはじまりをもたらした人物

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