園村三による「TBS NEXT WRITERS CHALLENGE」の第1回(2023年開催)大賞受賞作を連続ドラマ化した『フェイクマミー』(TBS系)。「金曜ドラマ」というTBS連続ドラマの看板枠の脚本を、商業デビュー作家が手掛けるという異例の事態は、放送開始前からドラマ好きの間で話題となった。
放送開始後も、元バリキャリ女性と元ヤンママによる子育てという、今までに無い組み合わせが人気となり、SNSを中心に様々な反響を呼んでいる。
波瑠と川栄李奈という今までに無かったものの絶妙に合う組み合わせや、子役・池村碧彩の好演も光る『フェイクマミー』について、毎クール必ず20本以上は視聴するドラマウォッチャー・明日菜子がレビューする。
※本記事にはドラマの内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい。
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独身女性とヤンママの連帯を描いた心強いドラマ

2025年も残すところあとわずか。今年、心惹かれたドラマを思い出してみると、「連帯」や「共存 / 共生」をテーマにした作品が多かった。個人主義で実力重視な社会に疲れ、ひとりで生き抜くことの厳しさを痛感する中で、そうした作品が心地よく感じられたのかもしれない。そんな中、またひとつ心強いドラマが登場した。独身女性とヤンママの連帯を描いた『フェイクマミー』である。
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先を読むのが難しいファミリークライム・エンターテインメント

東大卒・元バリキャリで転職活動中だった花村薫(波瑠)は、元ヤンでベンチャー企業「RAINBOWLAB」社長の日高茉海恵(川栄李奈)から「ニセママ契約」を持ちかけられる。自社の広告塔として表に立つ彼女には、非公表の一人娘・いろは(池村碧彩)がいた。いろはは類い稀なる天才児で、名門私立・柳和学園小学校を志望している。しかし、規律と品格を重んじる柳和学園の入学試験では、子どもの能力だけでなく、「親子面接」も重視される。最初は、いろはの家庭教師でしかなかったはずの薫は、あることをきっかけに「日高茉海恵」になりすまし、親子面接を受ける。

試験に合格したいろはは無事、柳和学園に入学し、薫の「ニセママ業」も続行。だが、第4話では、いろはのクラスの担任教師で、薫の元家庭教師であった佐々木智也(中村蒼)に、替え玉受験がバレてしまう。さらに、いろはの父親が、RAINBOWLABの競合「三ツ橋食品」社長の本橋慎吾(笠松将)であることが判明。薫にとって唯一のママ友となったさゆり(田中みな実)の息子・圭吾(髙嶋龍之介)といろはは異母兄妹だったのだ。

独身女性とヤンママのシスターフッド、疑似家族モノ、名門私立のママ友バトル、大手企業による競合ベンチャー企業への圧力、そして、ほのかなラブもあり……? な、先を読むのが難しいファミリークライム・エンターテインメントの爆誕である。
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本作は2025年の「いま」を的確に捉える

『フェイクマミー』の第1話から驚いたのは、2025年に放送された様々なドラマで扱われてきた多くのテーマが、この一作に盛り込まれていたことである。『フェイクマミー』の構想は2023年以前から考えられていた(元のタイトルは『フェイク・マミー』)ものなので、この一致は偶然でしかないが、本作は、2025年の「いま」を的確に捉えた作品だといえる。
たとえば、独身女性×子持ち女性の連帯は、さまざまな家庭環境の人々が「家事」を通して、悩みや苦しみを分かち合った『対岸の家事~これが、私の生きる道!~』(TBS系)のエキシビジョンマッチのようにも感じた。そして、茉海恵といろは、そして薫の関係性は、職場でも家庭でも学校でもない「サードプレイス(第三の場所)」という新たな概念を提示した『バニラな毎日』(NHK総合)を思い出す。また、子どもを持たない女性がどうやって社会と関わっていくかという問いは、『日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった』(フジテレビ系)に登場した冨永愛演じる都のエピソードでも考えさせられた。