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ena moriが歩みを振り返る 15歳で一人海外に移住し、今や世界から注目される存在に

2024.12.3

#MUSIC

音楽活動は、幼い自分との対話と理解。「歌詞に書くことで、不安や辛さにピリオドを打つ感覚になっていった」

ーフィリピンに行って、自分自身や自分の好きなことを取り戻す時間が増えていくなかで、音楽活動を本格的にスタートさせたきっかけを教えてください。

ena mori:ずっと音楽を作るのは好きで、誰かに聴かせるつもりもなく作り続けてはいて。大学ではミュージックプロダクションを学んでいて、卒業制作でEPを作る課題が出されたときに、初めて歌ってみたんです。最初は自分で歌うことにすごく抵抗があって、自信があるピアノのEPを作ろうかなと思っていたんですけど、ここでチャレンジしなかったらもったいないなと思い、軽い気持ちで3曲入りのEPを作ってみたんです。

そしたら学校の先生がすごく気に入ってくれて、周囲の後押しもあってインディペンデントで2曲ほどリリースしてみたんです。そこから「ライブをしてみたら?」と言われるようになり、いろんな人たちと繋がるようになって、音楽活動がスタートしました。

ーena moriさんの楽曲は、サウンドはすごくポップでキャッチーなものが多いけど、歌詞を見ると常に自分との対話を深くした先の感情が映し出されていますよね。不安や恐怖を素直に語りながらも、そこからの解放を願う楽曲が多いと思うのですが、そうしたメッセージを楽曲に込める思いを教えてください。

ena mori:フィリピンには自分一人だけで移住したので、家族や友達もいないし、一人になる時間がすごく多くて。そんななかで、しっかり自分の芯を持っていないと、どんどん自分がダメになっちゃうかもしれないと思ったんです。日本にいたときのように悪循環を繰り返してしまったり、自分の好きなものがわからない状態でダラダラしていたらフィリピンに来た意味がないですし。

なのでそこから、自分に自信を持てるよう、たくさん自分について考えるようになりました。そのなかでだんだんと、私が子供の頃に不安だったことや、変化することの辛さについて歌詞に書くようになって、自分自身でその不安や辛さにピリオドを打つ、セラピーのような感覚になっていったんです。

ーインナーチャイルドをケアしていく作業でもあるんですね。大人になったena moriさんが当時の思いを楽曲として伝えていくことによって、きっと当時の自分が救われていく側面もあるんだろうなと思います。

ena mori:そうだと思います。当時の思いを歌詞に書くことで、解放ではないんですけど、良い区切りをつけられるというか。同時に、私と同じような思いをしている子に伝わると良いなと思っているし、私が小さい頃に聴きたかった曲を書きたいと思っていつも歌詞を書いています。

ー解放ではなく、「区切る」というのはどういう感覚なんでしょうか?

ena mori:そうですね……。アナライズ(分析)したいっていう感じですね。「どうしてこういう思考になっていたんだろう」とか「今思えば、当時はこういうふうに思っていたんだな」みたいに、自分にクレジットをあげる感覚。全ての行動には理由があると思っていて、当時の自分の感情や言動を見つめていくことで、「こういう気持ちだったんだな」ということを理解できるようになっていくんです。そうすることで、思い返したくない恥ずかしいことではなくなる。そういうプロセスが私にも必要だったんです。

ーなるほど。「歌詞を書くことがセラピーのような感覚」という言葉に納得します。ena moriさんの楽曲は「孤独」というのも一つのテーマにあるなと思うのですが、今現在のena moriさんにとって、孤独を感じない場所やコミュニティはありますか?

ena mori:私の楽曲って、周りのアーティストもそうですし、ユニークで少し変わってる人だったり、それこそLGBTQ+コミュニティに聴いてもらえることが多いんです。違うトピックではあるけど、孤独感やしんどいと思う気持ちに対して共感できるところがいっぱいある。お互いが感情的であっても受け入れられるセーフスペースを作る。そういうニュートラルな相互理解がすごくあるなと思います。そういうアートを通したコミュニティは私にとって大事な存在です。

ー自分のエモーショナルな部分を相手に出すときって、「これを言ったら相手にも辛い思いを分け与えてしまうかもしれない」と思って言えなかったりすることってあると思います。だけどena moriさんは、音楽を通していろんな個やコミュニティと繋がって、コミュニケーションをしているんだろうなと感じました。私は楽曲“SOS”が好きなんですけど、聴き手によってはLGBTQ+のアンセムっぽく聴こえると思っていて。周りからの圧力や、閉じ込められる感覚で孤独を感じてしまい、「助けてほしい」と叫ぶ姿ってすごくLGBTQ+コミュニティが共感できる部分だと感じています。

ena mori:本当ですか! そう言ってもらえるとすごく嬉しい。

ーena moriさんのアートワークもドラァグっぽいビジュアルが多いなと思っているのですが、影響を受けたLGBTQ+コミュニティやアーティストはいらっしゃるんですか?

ena mori:オープンにクィアとは言ってないかもしれないですけど、Princeはすごく好きです。当時ってすごく偏見が多かった時期なのに、自分を貫き通して、マスキュリニティとフェミニニティを混合させて刺激的な音楽を作っていたのは本当に尊敬します。それにいわゆるゲイアイコンとされているシェール(Cher)やビョーク(Björk)といったアーティストにもすごく惹かれてきました。私自身も自分のセクシュアリティを探求していた時期があったので、ゲイアイコンとされているアーティストにはすごく救われてきたし、刺激を受けていたんです。特にビョークは、子供っぽいところもありながらも、大人になっていく辛さや自身のセクシュアリティについてもすごくオープンに歌っていて、私にとってはヒーローのような存在です。

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