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竜美(上白石萌音)と虎太郎(高杉真宙)の愛らしさと面白さ

本作の何よりの魅力はキャラクター造形の緻密さと、それを演じる俳優の良さだ。前述した乾や、竜美の両親だけでなく、上白石萌音と高杉真宙が演じる竜美と虎太郎も実に愛すべきキャラクターに仕上がっている。まず上白石萌音演じる竜美の最大の特徴は、言うまでもなく「将棋」である。彼女は物事の大半を将棋になぞらえて分析、解説、行動する癖がある。作品そのものの構成も、彼女に合わせて、和装姿(奨励会時代からの正装)で気合を入れて臨む終盤の局面、さらには、その後の「感想戦」という形での各話の総括という、将棋に因んだ流れが基本になっている。だが、竜美の面白さは、それだけに留まらない。
第5話で人気の和菓子・一徹餅を一目見ただけではしゃぐなど、甘いものに目がないところ。第4話で郷田(稲葉友)が、友人である虎太郎に対して「いいか、ぜってー負けんじゃねえぞ」と言ったら、なぜか反射的に竜美が「はい! 」と返事をしてしまうほど、極端に負けず嫌いな性格。さらに、一度考え始めらたら部屋に閉じこもって出て来なくなるほどの凄まじい集中力。どれも彼女が元棋士であるという一点に繋がっていく性質でもあるのだが、演者である上白石萌音がふんわりと穏やかに、そして、キュートに演じていることもあり、とても素敵に映る。対する高杉真宙演じる虎太郎は、彼女に振り回される「優しすぎる若き所長弁護士」。中学生の頃のエピソードから彼の弁護士としての信条が明らかになった第4話は彼が主人公の回とも言えるが、何より「餃子を2個一気食いして小さくストレスを発散してる」という訴訟でボロ負けしたり示談交渉で惨敗したりした時の憂さ晴らしの方法がなんとも彼らしく、愛おしかった。