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自分の見ている世界と他者の見ている世界は異なる

TV番組『デザインあneo』の人気コーナー「デッサンあ」を、実際に会場で体験できるコーナーも。複数人でモデル(今回はバイク)をぐるっと取り囲んで、それぞれが全力で目の前のモデルをデッサンするという美術教室のような趣のコンテンツである。描いたデッサンは背後の大スクリーンで上映され、他の人が描いたものと見比べることができる。そして本作の学びは、まさにその「見比べる」ところにあると言えるだろう。

絵の上手い下手は全く関係ない。そこにあるのは、同じ人間どうしが同じものを見て描いているはずなのに、根本的に捉えているものが違うという事実だ。見る角度によってモノの形が劇的に変わるのもそうだし、描く人によって優先順位の付け方や表現方法はまるで違う。自分の見ている世界と他者の見ている世界は異なるのだと、実体験を通して思い知ることができる企画だ。美術の授業とは本来、いかに上手く美しく描くかではなく、こういうことを知るためのものなのではないか……と思う。