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ドラマ『ちはやふる-めぐり-』印象的な人物同士の対比と映画版からの巧みなリンク

2025.9.10

#MOVIE

©日本テレビ
©日本テレビ

様々な「2025年夏ドラマ」のランキングでも上位にランクインするなど、ドラマ好きの中で話題を集め続けているドラマ『ちはやふる-めぐり-』(日本テレビ系)。

その前日譚たる映画『ちはやふる』三部作に出演した上白石萌音らが同じ役として出演することも話題となっていたが、ドラマの後半戦となる第6話以降では、広瀬すず・野村周平・矢本悠馬・森永悠希・佐野勇斗・優希美青ら瑞沢高校競技かるた部OBも勢揃いし、映画版のファンにとっても更に“エモい”展開となっている。

OBが本作の主人公たる現役のかるた部メンバーたちの師匠となり、その師弟関係や師匠同士の関係が物語をさらに深める本作の後半について、前半の記事に続いて、ドラマ映画ライターの古澤椋子がレビューする。

※本記事にはドラマの内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい。

かるたを通して描かれる「大人の青春」

『ちはやふる-めぐり-』で描かれた現役高校生たちの青春©日本テレビ
『ちはやふる-めぐり-』で描かれた現役高校生たちの青春©日本テレビ

競技かるたを通して映し出される令和を生きる高校生たちの青春。『ちはやふる-めぐり-』の前半では、青春の敗者であった高校生たちが競技かるたと出会い、自分たちなりの青春を味わっていった。そして、後半となる第6話以降では、高校生たちを導いてきた大江奏(上白石萌音)の青春にフォーカスが当たっている。

奏は、競技かるたで読み札を読み上げる読手で最上位の資格を持つ人物「専任読手」を夢に見つつも、コロナ禍やタイミングもあり、夢を阻まれてきた。大学には研究職のポストが無く、実家の呉服屋も手伝わなければならない。そんな現実に向き合い、夢を追う気力を失っていた。第2話で奏が、自身が顧問を務める梅園高校競技かるた部の部員・藍沢めぐる(當真あみ)に「なってみせます。エビデンスに、私の身を尽くして」と誓ったことで、めぐるは奏に救われたが、奏の方もめぐるがいたからこそ、夢を追う決断ができたのだろう。

第6話では、夢への道筋ができた奏の背中をめぐるが押す展開に。憧れの専任読手・中西泉(富田靖子)の京都にある研究室に入る機会を得た奏を応援したいめぐると、これまで奏と一緒にかるた部の活動をしてきたからこそ共に東京都予選に進みたい与野草太(山時聡真)のすれ違いは切なく、それぞれが過ごした奏との時間の違いを思わせた。これまで、奏とめぐる、奏と草太の関係性を丁寧に紡いできたからこその納得感ある葛藤と言える。

第9話で、瑞沢高校競技かるた部OBで研修医の真島太一(野村周平)が梅園高校競技かるた部の部員・白野風希(齋藤潤)に「青春は時間を表す言葉じゃない」と語ったように、青春は何も、学生時代だけに味わえるものではないのかもしれない。何かに向かって懸命に努力する期間こそが青春。いつからでも青春はできるのだ。

大江奏=上白石萌音がこれ以上ないほどにハマり役な理由

映画からドラマへ。大人になった奏を見事に表現する上白石萌音©日本テレビ
映画からドラマへ。大人になった奏を見事に表現する上白石萌音©日本テレビ

大人の青春は、原作でも映画でも、『ちはやふる』シリーズにおいて重要な要素の一つだった。映画版の主人公であった綾瀬千早(広瀬すず)や真島太一の師匠・原田秀雄(國村隼)も、長年かるたに携わりながら名人を目指し、いつまでもかるたを通して青春を味わっていた人物だ。

『ちはやふる-めぐり-』では、大人の青春を表現する役割を大江奏が担っている。原作マンガでは小さめのツインテールをした癒し系の風貌ながら、試合となると熱を帯びる表情が魅力的だった奏。映画版で上白石萌音がキャスティングされた際には、そのビジュアルのマッチ具合に驚かされたのを覚えている。最初の映画である『ちはやふる-上の句-』の公開から9年、現在の奏はショートカットで落ち着いた色味の装いとなり、髪型や服装は、高校生の頃から大きく変わっているにも関わらず、大人になった奏として納得できる見た目のままなのは上白石ならではだろう。

また、高校生時代の奏と言えば、古典のことになると口調が速くなり、話が止まらなくなるオタク気質な人物。大人になった奏は、ある程度はわきまえつつも、話したい気持ちが抑えきれない場面も多々あり、可愛らしさは変わらない。演じている上白石自身も作中の奏と同じくらい年齢を重ね、若い頃と変わらない部分を持ちながらも、しっとりと成熟した演技も見せている。上白石自身の意志の強いイメージが、先生としての奏のスタンスにもリンクしており、見た目だけでなく内面的なキャラクターも含めハマり役と感じさせる。

更には、上白石は声優や歌手としても活動しており、声による表現も得意。彼女の声の力が、奏のかるた読みの上手さと専任読手を目指す設定に説得力を増している。奏の口調は噛みしめるように一つひとつ丁寧に語りかけるようで、古典の知識を引用して高校生たちを導くシーンにおいても、信頼して付いていきたくなる顧問としての魅力も表現していた。

映画からドラマへ。同じ役の大人になった姿を俳優として成長した状態で再び見られることは、とても贅沢なこと。上白石の人生の一部を共にした奏はとても幸福なキャラクターと言えるだろう。

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