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注目の奥山大史監督による映画『ぼくのお日さま』を視線、息遣い、音楽から観る

2024.9.6

#MOVIE

©2024「ぼくのお日さま」製作委員会/COMME DES CINEMAS

少年が見つめる世界

©2024「ぼくのお日さま」製作委員会/COMME DES CINEMAS
©2024「ぼくのお日さま」製作委員会/COMME DES CINEMAS

『ぼくのお日さま』は初雪から始まる。野球をしている少年がふと手を止めて、空から降ってくるものを眺める。明るい空をちらちらと舞うそれが初雪であることに興奮し、夢中で眺める彼の眼差しは、奥山大史監督のデビュー作である『僕はイエス様が嫌い』において、彼にしか見えない小さなイエス様(チャド・マレーン)を見つめる主人公・ユラ(佐藤結良)の眼差しと通じるところがある。彼にとっての初雪もまた、ユラにしか見えない神様と同じように、大人が見る初雪とは違う特別なものなのだろう。その眼差しは、すべてのものが目新しかった、観客自身の幼い頃の記憶を呼び覚ます。それだけで、奥山大史が描く、新たな「ぼく」の物語に引きずり込まれる。

その少年、タクヤは苦手なアイスホッケーで負傷中、フィギュアスケートの練習をする少女・サクラの見事な滑走に心奪われる。気づけば彼女の動きを模倣しているタクヤ。見かねたサクラのコーチ・荒川が、タクヤの練習に付き合うようになり、やがて荒川の提案で、タクヤとさくらはペアでアイスダンスの練習をはじめることになる。

©2024「ぼくのお日さま」製作委員会/COMME DES CINEMAS
©2024「ぼくのお日さま」製作委員会/COMME DES CINEMAS

本格的な演技は初というタクヤ役の越山敬達、さくら役の中西希亜良の瑞々しい演技の鮮烈さはもちろん、その2人を支え、動かしていく存在であるコーチ・荒川を演じる池松壮亮、そして、荒川の恋人である五十嵐役の若葉竜也が素晴らしい。池松は、ドラマ『海のはじまり』(フジテレビ系)においても、好きだった人・南雲水季(古川琴音)の娘・海(泉谷星奈)との複雑で良好な関係性をこれ以上ない説得力で演じているが、本作においても、子どもたちにとって最高のコーチを、優しさと包容力で体現している。

また、ドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』(カンテレ・フジテレビ系)や映画『街の上で』(2020年)等これまでの作品とは一風違った雰囲気を纏った若葉竜也との恋人同士のやりとりは、少ない言葉を通して、より深い愛情を感じさせ、決して多くはない場面で、しっかりと子どもたちの、荒川曰く「真っ直ぐな恋」に負けない大人たちの恋を描いていた。

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