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温かさと優しさによって冷たさに気づけた人々の物語

第2話で優太は、先輩の木山高志(石田卓也)に「飯もう食った? 」と聞かれるが、忙しすぎてご飯を食べたかどうかも思い出せない。気づけば食べかけのおにぎりが机の上にあり、口にして「冷た」と呟く。でも、その夜の晩活で耕助とともにポトフを食べた彼はしみじみと「温かいものの美味しさ」を実感する。そしてその話を聞いた耕助は、彼が料理人を目指した理由は、高校生の頃、父とケンカした耕助のために泣きながら優太が作ってくれたカレーの温かさだったと話す。そんな優太が持つ優しさを今度は「晩活」の外に向けていくのが第4話の展開だ。

職場でギリギリの状態でいる上野に、優太が電子レンジを使った唐揚げを作って振舞う。「たまには温かくて噛むやつ、食べない? 」と言いながら。普段は「温かいもの食べちゃうと眠くなるからさ、噛むのも疲れるし」とゼリー飲料で必要な栄養を摂取している上野は、彼の思いを汲んで受け入れる。そして第5話では、彼女が進んで「たまには温かくて噛むやつも、いいかなと思って」と優太の誘いに乗って社員食堂で唐揚げを食べている。耕助の作ってくれたカレーの温かさに思わず涙を浮かべた第1話の優太のように、優太のくれた唐揚げの温かさによって上野にも変化が生じたことがわかる。つまり本作は、目の前に出されたカレーやポトフや唐揚げの温かさ、そして、それを作ってくれた人の優しさを知ってはじめて、普段食べていたものの冷たさに気づけた人々の物語と言えるだろう。