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「晩活」に突破口を見出した男3人に対して上野ゆいは

本作の第1話冒頭は、交差点をせかせかと歩く人々の姿から始まった。ベンチには「使用禁止」の張り紙が掲げられ、つかの間休息する場所すら奪われた都会の風景。移動中のホームレスが荷物を落としても誰も見向きもしない。そんな雑踏の中を、菓子パン片手に、職場に向かう男性の後ろ姿。それが本作の主人公の一人、田窪優太の姿だった。この冒頭1分間の映像の中から読み取ることができるのは、本作の主人公たちは、この忙しなく、他人に寛容になる心の余裕すらなくなってしまいがちな日本社会をサバイブする現代人のうちの1人であるということ。夢を叶えテレビディレクターになり、周りから羨望の眼差しを向けられる立場にありながら、仕事に追われ、やりたいことが何かすら思いつかないほど追い詰められている優太。仕事で「認められる」ことに必死で、同期の苦しみに気づけなかった自分を責めて職場を辞めた耕助。そして、離婚を経験し、人一倍明るく振舞っているが何かを抱えているように見える葵も、そんな1人だ。
さらに、もう1人の主人公と言えるのが、穂志もえか演じる、優太と同じ職場で働くプロデューサー・上野ゆいである。第1話の終盤、耕助が通うカウンセラー(趙民和)からの「2ヶ月飾っていてもきれいなまま」「だから枯れない花だと思われがちなんですが、そうじゃない」「カスミソウは水に挿したまま誰にも気づかれずドライフラワーになるんです」という言葉とともに、ベッドに横になっている耕助の姿が映される。それは仕事を辞めたことを優太に明かせないままでいた耕助の心の不調の形容であるとともに、心が悲鳴を上げていることを無視して遮二無二働き、その苦しみを誰かに気づかれることがなかった優太、そして上野にも当てはまる言葉であるような気がした。よりよいドラマ作りのために奮闘するも、女性であることを理由に、上からも下からも理不尽な扱いを受ける彼女の生きづらさは、時に優太たち以上に事細かに作中で描かれる。そこで本作に生じるのが、一つの問いだ。優太は男友だち3人で行う「晩活」に、行き詰った日々の突破口を見出すことができたが、そこに加わることのできない上野はどうすればいいのかということ。そして、その問いの答えとも言えるのが、第4・5話の優太の行動だった。