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第1 章「宇宙の構造」
展示は「宇宙の構造」「手、身体、祈り」「見えない力」「自然界の循環とエネルギー」の4セクションに分かれ、日本からインドネシア、韓国、台湾、フィリピン、ブラジル、香港、メキシコまで、世界中から57組のアーティストが参加している。

まず目をひくのは、トーマス・ルフによる作品『d.o.pe.07 Ⅲ』だ。関数から導き出される「フラクタル」という幾何学構造を利用し、それを何層も重ねることで、深い森のようにも海底の珊瑚礁のようにも見える画面を完成させている。数学を使ってこんなにオーガニックな画面が生まれるなんて驚きである。

トーマス・ルフは写真の分野で知られるアーティストだが、本作は深みと柔らかさを持たせるために、画像をベロア製のカーペットにプリントして仕上げられている。絶対に踏めそうにないカーペットである。

宇宙の構造と銘打たれた第1章では、幾何学的形態や、ミニマルなモチーフを繰り返す作品が大半を占める。やはり時代や国籍を問わず、宇宙の構造を表すうえで、円や螺旋は重要なモチーフである。展示室に特に解説パネルなどはないが、うっすらと、時にハッキリと作品同士が響き合うように配置されているので、そのことを頭の隅に留めておくといいかもしれない。
展覧会の内容をさらに深めるため、大倉集古館の所蔵品から参考出展されているものもある。例えば14世紀の『護摩檀図』は、護摩を焚く際の飾り付けの作法をまとめた巻物。アジア版の魔法陣とでも言えそうだ。

こちらは世界を「面」で捉えているような作品の一角。フランシス真悟『Four Sides Equal(emerald-violet) 』は特殊な素材を使って制作されており、鑑賞者の位置や光の当たり具合によって色が変化する。捉えどころなく変化していく色彩が、日没後のマジックアワーの空のようで美しい。その前面に配置された青白磁の作品群は、宮永理吉(三代東山)によるもの。伝統的な陶磁器の技法を使って、緊張感のある彫刻的なフォルムを生み出している。