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アンドロイドとAIという終わらない存在と、終わりに向かう世界を祝福する
休憩を挟んでいよいよ『MIRROR』上演を迎える。来場者向けパンフレットに掲載された渋谷のコメントでは、同作品を制作する意図をこのように表現している。
世界は刻々と終わりに向かっている。この作品はその終わりと終わりの後のシミュレーションとバリエーションで出来ている。(中略)仮に世界が終わったとしても、その過程とその後が美しければいいじゃないか?それを想像してアンドロイドとAIという終わらない存在と祝福することが現在の人間に出来ることではないか?それを舞台作品として提示することが作曲家という概念も終わりに向かいつつある中で僕に出来ることではないか?
『MIRROR』は、鑑賞者の情報処理能力を飽和させてしまうほど密度が濃い作品だ。オーケストラによる演奏、4人の僧侶が唱える高野山声明、オルタ4の動作と切ないメロディの歌唱、スクリーンに投影される映像、ほぼ全ての歌詞で「人間とは何か、感情とは何か、機械と人間の違いは何か」を問いかける英語詞の和訳字幕を観て、聴いて、感じて、渋谷たちが提示する「世界が終わった後の音楽」に私たちは何を思うのか。それらを一切忘れて没入したい気持ちと、これだけの材料を用意してもらって何も考えなくてよいのかという気持ちがせめぎ合う。



