INDEX
「生きづらさを抱えている人を応援したい」。人間らしさを肯定する物語
―生きづらさを抱える人は、どの時代にも少なからずいると思います。いまこの時代に、その生きづらさをテーマにした作品を上演することに、どのような意味を感じていらっしゃいますか?
蓬莱:ものすごい勢いで変容していく社会の中で、なかなか価値観のアップデートが追いつかずに苦しんでいる人も多い気がするんです。若い世代の方々と仕事をすると、現代社会に絶望している子も多くて。コロナもありましたし、生きづらさを感じる瞬間が多くなった時代だと感じています。どんなことをすれば生活が充実するかもわからず、経済的な不安も多い。悩みを抱えている方々に応援といったらおこがましいですけど、何かしたいとはずっと考えていて。その一環として人間くさく、苦しんでいることを肯定するような物語を作りたいとは思っています。

吉高:生きづらさはみんな抱えてますよね。社会に対しての違和感もあります。SNSだけでなく、AIも凄すぎてフェイク動画なのか本当なのかも分かりづらくなってきてませんか? 「本当」を見つけづらい世の中になってきていると感じています。いちいち「この情報、本当かな?」って勘繰ってしまう自分が嫌になっちゃうこともあります。
—蓬莱さんは、過去のインタビューで「乗り遅れた人を肯定したい」とおっしゃっていたのが印象的でした。その考えは、「生きづらさを抱えている人を応援したい」という気持ちにつながっていますか?
蓬莱:そうですね。人は大概、醜いですし、さまざまな苦しみを抱えています。不安を感じるのも人間であるからこそ。人間らしさを肯定するものを描き続けていきたいです。
吉高:だから、蓬莱さんの作品を観ると毎回心がちゃんとえぐられるんでしょうね。
—吉高さんが演じる金田海は、リーダーシップをとって引っ張っていく一方で、自分が正しいと思うことを信じてまわりが見えなくなってしまうキャラクターだそうですね。実際にそのような経験をしてしまった経験はありますか?
吉高:迷惑をかけている自覚を持てるような大人になりたいなぁ。でも、それこそまわりに迷惑をかけるのもある意味人間らしさではありますよね。
そういえば、テーマパークのチケットをいただいたので、きっと喜んでくれるだろうと思ってマネージャーさんたちを誘って一緒に出かけたんです。でも私と一緒だと、どうしても気を遣わせてしまって心から楽しめていなかったんじゃないかなって感じてしまって。夢の国に行ったはずが、仕事をさせちゃったかもしれないな、と。「楽しい?」って聞くと、「楽しい」ってもちろん答えてくれるんだけど、それこそ「楽しい」のカツアゲをしてしまったかもしれない(笑)。
蓬莱:よかれと思ってなんですけどね。切ないね(笑)。
パルコ・プロデュース2025『シャイニングな女たち』

作・演出:蓬莱竜太
出演:吉高由里子 さとうほなみ 桜井日奈子 小野寺ずる 羽瀬川なぎ 李そじん 名村辰 山口紗弥加
東京公演:2025年12月7日(日)〜28日(日)
大阪公演、福岡公演、長野公演、愛知公演もあり
公式サイト: https://stage.parco.jp/program/shining