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川島小鳥が語る、カメラと人生。「今」を好きになれたのは、カメラがあったから

2025.10.8

シャオミ・ジャパン

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『明星』や『未来ちゃん』は人との出会いから。「葛藤しているときこそ、大事な人と出会う気がする」

―被写体にレンズを向けることで撮影者が自分本位になってしまう難しさも語られますが、川島さんはカメラを味方にしている。撮影するときに、どんなことを心がけていますか?
 
川島:カメラを向けた先と、できるだけ境界線を薄めたいと思っています。どうしてもカメラマンって上の立場になりがちですが、若い頃にお世話になっていた写真家の沼田元氣さんがよく、写真を撮る人は全然偉くなくて、被写体をしてくれる魅力的な人のおかげで写真が撮れるのだから絶対に勘違いしないで、と仰っていたんです。本当にその通りで、台湾で撮影した『明星』(2014年)はまさに、台湾で出会った人たちのおかげでできあがりました。
 
─『明星』は、ひとりの被写体ではなく、様々な人物が登場します。一人ひとりの背景を知らなくても魅力的に写っている。そういう人を引き寄せるのは、感覚的なものですか?
 
川島:感覚的なのですが……なんというか、もっと必死な感じですね。執念? といいますか(笑)生きている中で大きな壁にぶち当たることってあるじゃないですか。そんな感情がぐちゃぐちゃしていたり、ハテナを抱えていたり、自分のなかで葛藤しているときこそ、人と出会う気がします。
 
『未来ちゃん』(2011年)の時も、当時30歳手前だった僕にとって大きな出会いでした。僕は子どもの頃から東京で育って、便利な生活があたり前になってしまっていた。すぐにコンビニに行けるし、エアコンも快適。それに対して、未来ちゃんが住んでいる佐渡ヶ島の人たちの暮らしは、昔ながらの暮らしでした。五右衛門風呂に入り、家は茅葺き屋根で天候に左右される。不便だけれど、そこには本当の豊かさがありましたし、そこで暮らす未来ちゃんも、ものすごく人間らしくて。笑ったり、ふざけたり、泣いたり、怒ったり、素直に感情を表現しているのがカッコよかった。未来ちゃんを鏡にして自分を見てみると、そういうことをできてないなと思う部分もあり、「あこがれ」の気持ちも持ちながら写真を撮っていました。

─『BABY BABY』、『未来ちゃん』など作品づくりがターニングポイントとなり、ご自身に向き合ってきたのだと思いますが、近作『ソウルメイト s(e)oul mate』では盟友である臼田あさ美さんと、キャリアの転換期を迎えるもの同士の揺れ動く感情 / 覚悟を映し出していました。幾度目かのターニングポイント、どのような葛藤を抱えられていたのでしょうか?
 
川島:仕事も私生活も行き詰まっていたというか、いっぱいいっぱいになっていた時期に、たまたま、ソウルに滞在していた友だちから「遊びに来ないか」と誘われて。気分転換がしたかったのですぐに向かいました。
 
ひとりで街を歩いていると、言葉が読めないから異国感があって、歩いているだけで清々しい気持ちになったんです。そこから、東京の生活から逃げるようにして、毎月韓国に行くようになりました。
 
ひとりで行って、散歩をして帰ってくる。そのうちに、この場所で作品を撮りたいと思うようになりました。実は、高校生の頃に、2週間だけ交換留学で韓国に行ったことがあって、冬のはじまりの季節が印象的だったんです。その様子も思い出して、「もう一度ここで写真をはじめよう」と。初心に帰るような気持ちで作ったのが『ソウルメイト』でした。
 
─もう一度写真をはじめるパートナーとして、臼田あさ美さんをソウルに誘ったんですね。
 
川島:あさ美ちゃんとは『みつあみ』という3人の写真家が集まった写真集で会ったのがはじめてで、それから友だちとして仲良くなりました。そこから、何度かあさ美ちゃんを撮らせて頂く機会もあったんですが、お互いにとって「写真を撮る」というのは特別なことでした。
今回のソウルでは、僕から急に「写真を撮らせてほしい」と連絡をしたんですが、あさ美ちゃんも「なにかあったのだろう」と察してくれて、すぐに時間を作ってくれました。ソウルで3回撮影をしたんですが、あさ美ちゃんをこう撮ろうっていう雑念みたいなものが邪魔だなと思って、行く場所も決めずひたすら歩いて、写真を撮ることに集中しました。
 
─感情はどんな風に動いていたんですか。
 
川島:ずっと泣いていました。悲しい涙というよりも、一緒に歩いた時間がずっと美しかったんです。その時、自分たちの中にはあえて言葉にするなら「寂しさ」があったんですが、ソウルにいる間はそういうことを一切話さず、なんでもない話をして、タッカンマリを食べて、素敵な人に出会って、綺麗な景色を見て過ごしました。そういうことが、うれしかったのかもしれないです。

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