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野田秀樹×岡田利規が語る、公共劇場の役割。演劇界を牽引する2人が語り合う

2025.10.27

#STAGE

若手劇団の観客に対する好奇心に希望を感じた

人口減少、高齢社会が到来し、現代の日本の演劇を語る上で避けられない問題が「観客の減少 / 高齢化」である。どうしても沈んだトーンにならざるを得ない話題ではあるが、「演劇を観ない人は『演劇が自分にとって必要なものではない』と考えているからですよね。じゃあ『自分に関係ある』と思える体験にするべきだし、そう期待しながら足を運ぶ人を増やすことが大事。そして、その可能性はあると僕は思う」(岡田)という力強い言葉が聞けた。

岡田利規(おかだ としき)
演劇作家、小説家、演劇カンパニー「チェルフィッチュ」主宰。その手法における言葉と身体の独特な関係が注目される。2007年『三月の5日間』でブリュッセルの国際舞台芸術祭、『クンステン・フェスティバル・デザール』に参加。この初の海外公演以降、国内のみならず、アジア / 欧州 / 北米 / 南米あわせて90都市以上で作品を上演し続けている。2016年からはドイツの公立劇場レパートリー作品の作・演出も継続的に務める。2020年『掃除機』(ミュンヘン・カンマーシュピーレ)および2022年『ドーナ(ッ)ツ』(ハンブルク、タリア劇場)でベルリン演劇祭(ドイツ語圏演劇の年間における“注目すべき10作”)に選出。タイの現代小説をタイの俳優たちと舞台化した『プラータナー:憑依のポートレート』で第27回読売演劇大賞・選考委員特別賞を受賞。能のナラティヴの構造を用いた『未練の幽霊と怪物 挫波/敦賀』(KAAT神奈川芸術劇場)で第72回読売文学賞・戯曲・シナリオ賞及び第25回鶴屋南北賞受賞。2021年には『夕鶴』(全国共同制作オペラ)で歌劇の演出を手がけた。小説家としては、2007年に『わたしたちに許された特別な時間の終わり』(新潮社)を刊行。第2回大江健三郎賞受賞。2022年に『ブロッコリー・レボリューション』(新潮社)で第35回三島由紀夫賞および第64回熊日文学賞を受賞。

さらに岡田は数日前に三鷹市芸術文化センターで観たという劇団「いいへんじ」の『われわれなりのロマンティック』(※)に触れつつ、「もちろん芝居の内容も良かったけれど、僕が感銘を受けたのは、観客が『こういったものが観たかった』と場を求めて足を運んだ雰囲気が漂っていたこと。実際の声を聞かなくても、客席の空気でわかるんです。まだ市民権を得ていない、声にならない声を丁寧にすくい上げている演劇だと感じたし、何より客席が作品を求めていた。『こういうのって信じられるよね』と感じた、いい時間でした。僕が劇場でやりたいことの一つです」と熱く語った。

※いいへんじ主宰、中島梓織のインタビューも公開中。記事はこちら

これを受けて野田は「僕らの時代は例えば雑誌『ぴあ』があって、頼りにされていた情報源でした。今は自分の趣味以外のものが入りにくい状況。だから岡田さんや東京芸術劇場が信頼を得て、『ここについていけばいい』と思えるような、メディア的役割を果たせばいい」と応答。まだ見ぬ観客と才能が出合うような刺激的な場を創出する、ブランド力の強化と発信にも期待したい。

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