グータッチでつなぐ友達の輪! ラジオ番組『GRAND MARQUEE』のコーナー「FIST BUMP」は、東京で生きる、東京を楽しむ人たちがリレー形式で登場します。
4月13日は、日本屈指のポールダンサーKUMIさんの紹介で、ビジュアルアーティストの夢無子(むむこ)さんが登場。自由でいるために、スーツケース1つで世界中を旅している彼女には、わたしたちには見えなくなってしまった物事が「見えている」。MCタカノが「弟子入りしたい!」と願うほど、本質的な学びあふれるお話の数々をうかがいました。
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子供の頃は五感が敏感だけど、現代社会は鈍感にならないと生きていけない。
タカノ(MC):夢無子さん、昨日KUMIさんが「令和のシャーマン」っておっしゃっていました。
夢無子:なるほど(笑)。

中国で生まれ、大学進学を機に来日。その後、単身アルゼンチンへ。スーツケース1つで世界50カ国以上を旅し、写真、映像、インスタレーション、空間体験、表現の可能性を探し続ける ビジュアルアーティスト。国内外で個展多数開催するほか、現代風竹取物語でGUCCIの世界観を表現し話題となった「Kaguya by Gucci」の写真など広告も多く担当している。
https://www.instagram.com/mumuko_artist/
https://www.mumuko.com/
タカノ:でもちょっと、シャーマン感があるというか。
夢無子:本当に、アマゾンのジャングルでシャーマンと半年ぐらい暮らしていたから。
タカノ:ちょっとー! 今日足りるかな時間(笑)。プロフィールだけで濃密なんですけど、まず中国でお生まれになって、大学進学を機に来日。その後、単身アルゼンチンへ。スーツケース1つで世界50カ国以上を旅し、写真、映像、インスタレーション、空間体験、表現の可能性を探し続けるビジュアルアーティスト。国内外で個展を多数開催するほか、現代風竹取物語でGUCCIの世界観を表現し話題となった「Kaguya by Gucci」の写真など広告も多く担当されています。夢無子さんの写真すごいんですよ、本当にもう。
夢無子:どこが好きですか。
タカノ:鮮やかで、現実と非現実がミックスされていて、その空気感が丸ごと伝わってくるみたいな。
夢無子:なるほど。自分が見てる世界そのままを、カメラで表現してるだけなのね。そもそも、見えてる世界がちょっと違うのかもしれないけど。

タカノ:それはすごく面白いですね。現実にはないような空気感なんですけど、それが妙にリアルで。
夢無子:存在するけど、見えてる人と見えてない人がいるんじゃないかな。
タカノ:見えるようになりたい!
夢無子:シャーマンが言ってたのは、子供って生まれた時点ではみんな五感がすごく敏感で、全てが見えてるんだよね。世界には元々いろんな情報量があるんだけど、現代社会は鈍感にならないと逆に生きていけない。大人になって、どんどん鈍感になっていく。
タカノ:無意識のうちに、心をセーブしてるかもしれないってことですか。
夢無子:そう。特に東京なんて本当に鈍感にならないと、逆に死んじゃうかもしれない。
タカノ:たしかに。アマゾンでシャーマンと暮らしたのは、どういう経緯だったんですか?
夢無子:南米を旅しながら、お金に頼らずに生きてみようかなって実験をしたくて。向こうのWebサイトで、物々交換みたいな感覚で、人の家に住んで何かをやってあげて、向こうからは寝場所と食事を提供してもらうっていうのを見つけて、そういうふうに2〜3年ぐらい旅をしてたんだよね、南米全体。
タカノ:シャーマンとの生活は、どういう毎日なんですか?
夢無子:本当にお金が存在しない、資本主義が一切ない原住民で、狩りをしないと食べ物もないのね。一つの村がもう何十人とか、多くて100人ぐらいで、ジャングルからちょっと離れた安全な場所に家を建ててね。狩りはジャングルに入らないといけないから、6〜7人くらいの男たちのグループで入って、蛇とかワニとかと戦って連れて帰るみたいな。
タカノ:へえ……
夢無子:ワニが目の前にいて、2日間ずっと見つめるんだよ、お互い。
タカノ:ワニと見つめ合って……
夢無子:ワニも一瞬、気が緩む瞬間があって、そこで捕まえるんだよね。
タカノ:すげえ!
夢無子:それも、写真と一緒なんだよ。写真も瞬間を待っているからさ。相手が何も気にしなくなった瞬間を撮る。同じ事なんだよね。

タカノ:やっぱりそうやって色んなところに行って、野性的な感覚を養っているんですか?
夢無子:いや、やってることって全て通じているからさ。全ての経験がいい経験になるってことで。
タカノ:弟子入りしたい! すごく学びがありますね。
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ウクライナで戦争と向き合い、気を保つために必要だった意外な物
タカノ:そもそもなんですけど、夢無子さんのお名前って「夢が無い子」と書きますよね。これは何故ですか?
夢無子:中国出身で、元の名前はMUMUだったんですけど、日本に帰化したときにMUという漢字を探して、「夢無し」っていいなと思って。Nothing is Everything。「無し」ってすごく広い意味なんだなって。
タカノ:無いってことは、全てがある。
夢無子:そうそう。それでもうひとつ、目標は「子供でいたい」だったから、「夢無子」にしました。

タカノ:夢が無いって聞くと、現実? みたいな印象もありますけど、お話を聞くと、逆にむしろ夢があるようにも思えますね。
夢無子:私の中では、夢を見てるんじゃなくて、「ちゃんと生きろよ、みんな」だね。
タカノ:現実世界をね。いや、面白いです。夢無子さんはスーツケース1つで日々を生きてると聞いたんですが、スーツケースにはカメラ以外に何が入っているんですか?
夢無子:最近ウクライナに行っていて。向こうには爆弾が飛んでくるのを通知してくれるアプリがあるんだけど、通知を受けて、シェルターとか地下鉄に逃げなきゃいけなくて。それを何回も何回もやっていると本能的にパニックになっちゃうんだけど、気がついたらシェルターに唯一持って行っていたのが、「美顔器」だったんだよ。

タカノ:美顔器なんて、一番に置いていきそうなものですけれども。
夢無子:戦争と向き合って、自分はカメラマンでもなく、ただの女だと思った。もう毎日、すごく残酷な波が降ってくるわけ。全ての情報があまりにも新しすぎて。そういう中で自分を保つのはすごく大事で、自分のルーティンとして一番重要なものを、スキンケアにしてる。
タカノ:なるほど、そうなんですね。
夢無子:どれだけ爆弾が降ってきても、スキンケアをしたら、ちょっと東京にいる自分を思い出せるんだよ。
タカノ:心を保つのは、大事ですもんね。ではここで、1曲、夢無子さんの選曲をお送りしたいんですが、どんな曲を選んでくれたんでしょうか?
夢無子:ウクライナに行ったとき、もう本当に音楽も聴けなくなっちゃったんですけど、ピアニストのフジコ・ヘミングが『MONSTER』ってアニメのために自分で歌った“Make it Home”という曲があって、それが唯一聴けたんだよね。

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東京に住む人は、世界一物理的な距離感が近くて、世界一心の距離が遠い
タカノ:夕方のこの時間帯にいいですね。心が解放される。
夢無子:そう、いつも、この曲を聴くとすごく安心する。
タカノ:夢無子さん、世界中を旅されていますけれども、東京はどうですか。
夢無子:この前、渋谷に向かって歩いたんですよ。竹下通りを通って、原宿駅を通って、代々木公園を通って。それで気がついたんだけど、明治神宮と原宿駅が、1つの壁だけでくっついてるじゃないですか。それが面白いなと。神が住んでる超スピリチュアルな場所と、The資本主義の街がすぐ隣にあるのって、多分、世界のどこにもないよね。この共存、寛容性が東京の魅力かな。
タカノ:たしかに。僕も原宿よく行きますけど、言われて初めて気づきました。
夢無子:東京の多様性というか、ここに住んでる人はみんな多少ぶっ飛んでるから、組み合わせが面白いんだよね。

タカノ:東京に住む人を見て、何か思うところはありますか?
夢無子:東京に住む人は、世界一物理的な距離感が近くて、世界一心の距離が遠い。こんなに密に人間が住んでる場所も他にないから、スペースが無い中でバランスを取るためには、やっぱり心の距離を変えないといけないんだろうなと。
タカノ:アマゾンとはやっぱ逆ですかね。
夢無子:そうなんだよね、アマゾンは自然が広大でスペースが広いから、人はみんなもっと近づきたいんだよね。一緒にグループにならないと、自然と戦えない。死んじゃうから。
タカノ:心の距離もね。近くにいたいっていう。

夢無子:だから東京は真逆なんだけど、それはそれでいいと思うし、こういう場所だから生まれてきた文化っていうのは、やっぱ面白いなと思います。
タカノ:改めて、東京のカルチャーのユニークさみたいなね、気づきも与えられました。そしてね、やっぱり時間が足りなかった(笑)。本当にもっとお話をたくさん聞きたかったです。ありがとうございました。
夢無子:ありがとうございます。

GRAND MARQUEE

J-WAVE (81.3FM) Mon-Thu 16:00 – 18:50
ナビゲーター:タカノシンヤ、Celeina Ann