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ウクライナで戦争と向き合い、気を保つために必要だった意外な物
タカノ:そもそもなんですけど、夢無子さんのお名前って「夢が無い子」と書きますよね。これは何故ですか?
夢無子:中国出身で、元の名前はMUMUだったんですけど、日本に帰化したときにMUという漢字を探して、「夢無し」っていいなと思って。Nothing is Everything。「無し」ってすごく広い意味なんだなって。
タカノ:無いってことは、全てがある。
夢無子:そうそう。それでもうひとつ、目標は「子供でいたい」だったから、「夢無子」にしました。

タカノ:夢が無いって聞くと、現実? みたいな印象もありますけど、お話を聞くと、逆にむしろ夢があるようにも思えますね。
夢無子:私の中では、夢を見てるんじゃなくて、「ちゃんと生きろよ、みんな」だね。
タカノ:現実世界をね。いや、面白いです。夢無子さんはスーツケース1つで日々を生きてると聞いたんですが、スーツケースにはカメラ以外に何が入っているんですか?
夢無子:最近ウクライナに行っていて。向こうには爆弾が飛んでくるのを通知してくれるアプリがあるんだけど、通知を受けて、シェルターとか地下鉄に逃げなきゃいけなくて。それを何回も何回もやっていると本能的にパニックになっちゃうんだけど、気がついたらシェルターに唯一持って行っていたのが、「美顔器」だったんだよ。

タカノ:美顔器なんて、一番に置いていきそうなものですけれども。
夢無子:戦争と向き合って、自分はカメラマンでもなく、ただの女だと思った。もう毎日、すごく残酷な波が降ってくるわけ。全ての情報があまりにも新しすぎて。そういう中で自分を保つのはすごく大事で、自分のルーティンとして一番重要なものを、スキンケアにしてる。
タカノ:なるほど、そうなんですね。
夢無子:どれだけ爆弾が降ってきても、スキンケアをしたら、ちょっと東京にいる自分を思い出せるんだよ。
タカノ:心を保つのは、大事ですもんね。ではここで、1曲、夢無子さんの選曲をお送りしたいんですが、どんな曲を選んでくれたんでしょうか?
夢無子:ウクライナに行ったとき、もう本当に音楽も聴けなくなっちゃったんですけど、ピアニストのフジコ・ヘミングが『MONSTER』ってアニメのために自分で歌った“Make it Home”という曲があって、それが唯一聴けたんだよね。
