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「制作」と「運営」の両輪で走るキュレーション

2020年、新宿・歌舞伎町の中心地に開廊したデカメロンにて企画/運営/飲食など総合的なディレクションを務める。
黒瀧:僕は新宿歌舞伎町で「デカメロン」というバーの併設されたギャラリーを運営しています。他にも『EASTEAST_TOKYO2023』では、西尾久にある「灯明」という食堂を併設したギャラリー「LAVENDER OPENER CHAIR」なども紹介しました。僕らも彼らも、共にアート活動をしながらどうやって経済的に自立するかを考えています。その意味で「運営」というのが僕にとって重要な価値基準かもしれません。
ーシンプルに作品を制作して発表するだけではなく、「運営の思想」も持ち合わせている人たち。
黒瀧:「やりたいこと」と「するべきこと」をどちらも重視している世代なのかなとも思います。マーケットには乗りづらいアート活動と、クライアントワークを含めた自活を両輪で走らせていくために、どう折り合いをつけるか。そうしたことを志向しているチームの声を『EASTEAST_TOKYO2023』に反映させたかったのです。
ーだからこそ黒瀧さんのキュレーションした展示は、MESによるパフォーマンス型の作品など、一般的なアートフェアに並ぶ作品とは一味違うラインナップで、多くの観客の目を引いていましたよね。

黒瀧:もちろんフェアとして売上を出すことは考えていましたが、僕が意識したのは作品と販売の折り合いをどこまでつけられるかということ。自分たちが普段やっている営みを鑑賞者の皆さんと共にどれだけブラッシュアップできるのか、それが自立や自活にもつながるはずだと信じています。結果、アーティストたちの表現をブラさずに鑑賞してもらえるような、既存のアートフェアとはちょっと違ったブースを作ることができたと思います。キュレーションとしても、作家同士、スペース同士で話し合うことで、どこからが「デカメロン」でどこからが「LAVENDER OPENER CHAIR」かわからないけど共通性がある、そんな流れが実現できました。それは『EASTEAST_TOKYO2023』が目指している形の一つでもあるのかなと。
武田:僕も売上が全てではないと思っています。どうしてもビジネス的にいくら売れたのかとか、何人動員したのかとか、そういうことばかり聞かれるけど、むしろ何が自分たちのやりたかったことなのか、自分たちの判断基準を達成できたかどうか、それを踏まえて次にどうしたいのかといったことを、各ブースの人が考えてくれればいい。そしてその答えはコミュニティの数だけ存在したらいいというのが、僕のイメージする『EASTEAST_TOKYO2023』なんです。
ーアーティストやスペースが自分たちなりの価値観なり美学なりを突き詰められていればそれが一番だ、という。

武田:僕自身がアートワールドの外部にいる者だからというのもありますが、まったくアートを目的化していないんですよ。僕たちはアートフェアをやりたくて『EASTEAST_TOKYO2023』をやっているんじゃなく、「文化的エコシステム」の中でアートやクリエイティブを媒介に人と人がコミュニティを再生し、言ってしまえばみんなが幸せになっていく瞬間が見たいんですよ。