INDEX
「音楽をしたい」から「土壌をよくしたい」へ。Yutoが考えるアーティストの生き方
―最後に、The fin.のように世界で活躍したいと考えているアーティストや音楽業界の関係者に向けて、メッセージをいただけますか?
Yuto:音楽業界の人に言うなら、まずはどこでも行ってみたらいいと思います。自社にアーティストがいて、そのアーティストをアジアで売りたいと思うなら、アジアでライブを組んで、一回やればなにか絶対わかることがあるはず。現地の人にしても、一回も来たことがない人を誘おうとはなかなか思わないじゃないですか?
The fin.はたまたま早い時期に誘ってもらえましたけど、やっぱり一回行くと、「この人たち、来てくれるんだ」と思ってもらえるし、ちゃんとファンベースがあることを現地の人に見せるのが一番大事なことで。「この人が来たらこれくらいの人が集まるから、次はこれくらいプロモーションをして、5倍の人を集めよう」とか、そういうのは信頼のもとで成り立つ話だから、まずは行ってみることが大事だと思います。

―アーティストに対してはどうですか?
Yuto:アーティストの人は海外に住んでみるのもいいと思います。アーティストは感覚が一番大事だけど、日本のなかだけで生まれ育ったら、日本人の感覚しか身につかないじゃないですか? でも海外に住んでみると、グローバルな人たちに向けてメッセージが届けられるようになる。そうしたら、聴いてくれる人の幅も広がるはずで。やっぱり俺はイギリスに行ったのがめちゃくちゃデカかったんですよね。イギリスに行ってからつくる音楽も変わったし。
―中国のファンが増えたのもそれくらいのタイミングですもんね。直接的な因果関係がどれほどあるかはわからないけど、マインドの変化は影響があるはずで。
Yuto:絶対関係あると思います。あともうひとつ、アーティストの人にメッセージを贈るなら、「自分が好きなものを追い求めて、それをやめない」っていうことでしかないですね。本当に面白いものをつくってたら、絶対誰かが気に入ってくれて、広がっていくんで。それがどのタイミングになるかはわからないけど、やめないことが一番大事だと思う。
20代前半のころはなにもわからなくて、ただ「音楽をしたい」だけだったけど、いまは「土壌をよくしたい」っていう思いがあるんですよね。そのためには、ネガティブな部分を見つめることも大事で、ちゃんと問題を切り分けて、その問題をひとつずつつぶしていった先になにが見えるかが大事だと思っていて。

―ネガティブな部分も含めてちゃんと現状を見つめないと、その解決策も見えないですもんね。
Yuto:そうなんですよね。その点で言うと、やっぱりトム・ヨークはすごいなって。ずっと問題点を言い続けて、それが20年後に本当になって、預言者みたいに見える。でもアーティストってそういうことだと思うんです。社会の流れを見て、自分のアティテュードやスタンスを投げかけていく。自分もだんだんとそういう道を進み始めてる気がします。