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クィアネスの表明
2023年11月に掲載された米誌・Varietyのインタビューで「女性を愛している」と発言しクィアであることを認めたビリー。本作の収録曲の中でも特にバンガーとして傑出した”LUNCH”では、昼食というメタファーでガールフレンドとの性行為を描いている。ダンスフロアのサウンドに乗せ、グルーヴィーに欲望を宣言する。トロイ・シヴァン(Troye Sivan)の”RUSH”が2023年のクィアたちのサマーアンセムとなったように、この曲が2024年のアンセムになることは間違いない。
I could eat that girl for lunch(あの娘だったらランチに食べられる)
”LUNCH”
Yeah, she dances on my tongue(彼女が私の舌の上で踊る)
Tastes like she might be the one(本命みたいな味がする)
クィアネスという観点で言うと、7曲目”L`AMOUR DE MA VI”にも注目したい。前半のソウル / ボサノバなサウンドから、楽曲中盤では1980年代を彷彿とさせるシンセラインと、ハイパーポップ的にピッチアップされたボーカルが融合する。
ソフィー(Sophie)や100 Gecsのローラ・レス(Laura Les)をはじめ、クィアな音楽家が多く活躍しているハイパーポップシーンにおいて、ボーカルを極度にピッチアップさせる手法は、声色からジェンダーイメージを脱色し、ジェンダーから解放されるための機能を果たす。個人的には、クィアを公表したビリーがこの「声を作り変える」手法に取り組んだことには意味があるように感じる。