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消費される時代だからこそ養いたい、時代を読む力と表現力
─卒業してからの1年間は、どんなふうに過ごしていたのでしょうか。学生から社会人になったことでの戸惑いなどはありましたか?
シトナ:学生のうちは社会から守られている存在であることはわかっていたんですけど、いざ卒業してみると、いろいろなことに自ら挑戦していかないとどんどん取り残されてしまうと実感しました。例えば今は、音楽も消費される時代だと思うんです。サブスクで音楽を聴くことが主流になって、イントロから10数秒で耳に残る曲が作れなければ、なかなか聴いてもらえないと思うんですよね。
音楽をビジネスとして成り立たせることと、アーティストとして妥協しない作品を作ること。この2つを両立させるためには、例えばプロデューサーとして誰かの才能を引き出す能力や、今話したような時代を読む力も養っていく必要があると思うんです。そういうことを、卒業してからはより考えるようになって、音楽に対してかなり神経質になりました。

─現在は、アーティスト活動をしながら働いているのですか?
シトナ:システムエンジニアの仕事をしつつ、母校で音楽理論の講師をしています。自分よりも若い子たちが普段どんなふうに音楽を聴いているのか、母校でモニタリングしているんですよ。彼らは、例えば音楽をYouTubeで倍速にして聴いているとか、ちょっと自分はついていけないところもあるんですけど(笑)、意識調査という意味ではかなり貴重な体験をしていると思っています。
─表現をする上で、音楽以外のものからインスパイアされることもあります?
シトナ:昔、絵を描いていたので、散歩がてら美術館へ行くことは多いんですけど、その時にアイデアが浮かぶことはありますね。でも、散歩しながらもイヤホンから流れてくる音楽を無意識に分析して聴いたりしています。最近は映像やファッションにも興味あるし、あとはアイドル。最初はJ-POPのアレンジを学ぼうと思ってアイドルソングを聴いているうちにハマってしまいました(笑)。インスパイアされるし癒されるし……「こういう見せ方もあるんだ」みたいな、裏方としての勉強にもなるんですよね。いつかは一人のアーティストをトータルプロデュースしてみたいです。
