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首席で音大を卒業。感覚と理論の両軸から音楽を捉える
─大阪音楽大学では、いろんなジャンルのメロディを研究する授業を受けたそうですね。
シトナ:インド音楽や沖縄音楽、ハワイアン、民謡、演歌……ロックもロックンロールからハードロックまで、細かくジャンルごとに教えてもらいました。いわゆる職業作曲家を育成する学校なので、クライアントからどんな注文が来ても応えられるスキルを身につけるんです。参考曲を決めて、それをまず分解してみて構造を学ぶという。なので、他のアーティストの曲を聴いていても分析をしてしまう癖がついてしまいました(笑)。

─そうやってさまざまな音楽ジャンルの構造を知った上で、好きになったアーティストは?
シトナ:例えばSIRUPやSuchmos、WONKのように、J-POPのフォーマットでジャズやブラックミュージックをやっているアーティストに惹かれていくようになりました。
ジャズやブラックミュージックに関しては、最初は訳も分からず、ただただ「気持ちいい」と思って聴いていたんですけど、ジャズ科を専攻している友人のライブを観に行った時に、彼らがサックスを吹いたりピアノを弾いたりしている姿を見て、俄然興味が湧いてきたんです。それでジャズ理論の授業を履修し、ビッグバンドの譜面を書いたりアドリブを学んだりしていくうちにどんどん好きになっていって。ジャズでいうと特にチャーリー・パーカーやサム・ゲンデルの、音の積み重ねやメロディーのテーマからアドリブに入るバランスがすごい好き。どんどん理論的な部分とか、難解なものに惹かれていったんです。
─前作『MUSEUM』は、大学の卒業制作として取り組んだ作品ですよね?
シトナ:はい。いろんなジャンルの音楽が作れることを見せたくて、ミュージアムの中に様々な楽曲が展示されているイメージで作った作品ですね。それまでは自分で作ったトラックにボーカルを乗せてたんですけど、『MUSEUM』は新しいことに挑戦したくて、バンドサウンドを目指しました。
参考にしたのはKroiやBREIMENの音像で、彼らのようなジャズやヒップホップの影響を受けたオルタナティブサウンドは、自分も同じようなルーツがあるからとても親近感があって。しかも、ああいう音像に女性ボーカルが乗っているパターンって今まであまりなかったと思うんですよね。
─大学入学時は授業についていくのも精一杯だったというシトナさんですが、昨年春に首席で大学を卒業。そこまで成長したのは何か大きなターニングポイントがあったのでしょうか。
シトナ:やはりコロナ禍は大きかったですね。ずっとリモートの授業が続いていたので、その間に理論をしっかり学んだのがターニングポイントだったと思います。それまでの自分は音楽を「感覚」で作っていたけど、それだと引き出しが減っていく一方だったから、一からジャズ理論やポピュラー理論を学び直して、スケールやコードなど全て理解しようと思いました。そうすることで、感覚で作ったメロディに理論でコードを乗せたり、逆に感覚で並べたコード進行に理論がっちりのメロディを乗せたりできるようになって、自分に出来ることの幅がうんと広がったんです。
―感覚と理論の融合ですね。
シトナ:加えて自分の作品を「商品」として売る場合にどんなスキルが必要なのかも考えました。クオリティの高さ、サウンドメイク、自分にしか出せないオリジナリティを模索しながら「商業的な音楽とは何か?」を研究したことが、自分のスキルアップに繋がったのかなと思っていますね。
