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令和の時代に敢えて「不適切」を描く狙い

『池袋ウエストゲートパーク』以降、数々のドラマでタッグを組んできて本作でもプロデューサーを務める磯山晶は、このように発言している。
「企画当初は、不適切にあたる台詞や単語をピー音などで伏せようかと宮藤さんと話し合っていました。不適切な発言を一つひとつ、考査を経て『言い換え』すると、このドラマの性質そのものが変わってしまうためです」
そしてドラマの中では繰り返し、注意書きのテロップが表示される。
「この作品には、不適切な台詞や喫煙シーンが含まれていますが、時代による言語表現や文化・風俗の変遷を描く本ドラマの特性に鑑み、1986年当時の表現をあえて使用して放送します」
昭和も令和も関係なく、とことん「不適切」を描くことこそが、本作で宮藤がやりたかったことなのだろう。なぜ、宮藤がそこまでして「不適切」にこだわるのか、本人からその意図は説明されていないが、不適切と糾弾されることに怯え、自分自身の本音と現実の矛盾に苦しむドラマの登場人物たちを見れば、その一端は垣間見える。分断と多様化が進み、一人ひとり触れているメディアが異なり、大きな物語を描きにくい時代だ。そんな時代に誰が見ても「適切」な表現をすることは難しい。だが、「多くの人にとっての不適切」なら分かる。だからこそ宮藤は、『不適切にもほどがある!』という割り切りを表明したタイトルのもと、明らかな「不適切」をとことん見せて、視聴者それぞれが、反面教師としての「適切」とは何かケースバイケースで考えていく機会を作ったのではないか。

第6話を終えて、父子である井上昌和と向坂キヨシは恋愛関係になりかけたし、恋愛関係になりそうになった市郎と犬島渚(仲里依紗)は祖父と孫であることが判明した。そうした「不適切」な関係を物語の根底に置くドラマは、「全てが不適切かもしれない」と穿った目線で見ていった上で、自分なりの「適切」を考えるきっかけにするのが良いのではないか。もしかしたら、その「不適切」の中に一理くらいはあるかもしれない。
<百害あって一利ない でも一理あるジジイでいたい>
金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』

TBS系にて毎週金曜夜10時から放送中
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/futekisetsunimohodogaaru/