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令和の社会学者とインティマシー・コーディネーターの描写の不適切

第4話では、市郎と入れ替わるように、令和から昭和にタイムスリップした社会学者の向坂サカエ(吉田羊)のセリフが話題となった。タイムスリップした昭和では、サカエの元夫・井上昌和(中田理智、三宅弘城)が中学生で、サカエと一緒に昭和にタイムスリップした息子・向坂キヨシ(坂元愛登)とたまたま同級生となり、仲良くなる中で、もしかすると昌和がキヨシに恋心を抱いているのかも……という展開になるのだが、昌和がキヨシに対して掛けてきた電話に割り込んだサカエのセリフがこちら。
「あなた、自分がモテないからって女を軽視してる。女性蔑視。(略)ミソジニーの属性があるんです、昔から。そういう男に限って、ホモソーシャルとホモセクシュアルを混同して、同性愛に救いを求めるの。(略)女にモテなくて男に走ってるの。あなた厨二病なの。自分がモテないのは女が悪いっていう考え方を捨てない限り、モテないし、変われない。わかる?」
もちろん、これは家族内で交わされている会話ということで、配慮が行き届いてない前提ではあるが、仮にも学者から発せられた言葉としては雑と言わざるを得ないだろう。サカエが性差別やジェンダー問題の論者としてメディア露出もしているという設定を踏まえると、作中では「適切」な考え方を持つ人物として登場させていると考えるべきだろう。そんなサカエに「不適切」なセリフを語らせている。
第4話では他にも、ドラマを撮影するシーンで登場するインティマシー・コーディネーターのケイティ池田(トリンドル玲奈)の描写があるが、本作ではセックスシーンの撮影現場や、純子と秋津睦実(磯村勇斗)のセックス未遂シーンまで描かれるにも関わらず、エンドロールに「インティマシー・コーディネーター」の文字は無かった。
本来は、どちらも社会学者やインティマシー・コーディネーター当事者の監修が入って然るべきだろう。本作と同じく宮藤官九郎・脚本、磯山晶・プロデューサーの前作『俺の家の話』(2021年 / TBS系)は、介護と医療と能楽とプロレスについてプロによる監修を入れている。それは、作中に重要なモチーフとして描かれるために、専門的な知見が必要だと考えたからだろう。であるならば、少なくともドラマ全体を通して出演するサカエの職業である「社会学者」については監修を入れてもおかしくない。でも、しなかった。これは、どういう狙いなのか。