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田中和将×高野勲対談 オルタナティブであり続けるGRAPEVINEの美学

2023.9.27

#MUSIC

日本人シンガーの最前線を行く、田中和将の歌

ーいろんなリファレンスから影響を受けつつ、田中さんはそれを日本人の、GRAPEVINEのシンガーとして、どう表現するかをこれまでもずっと追求されてきたと思うんですけど、歌に関しては今回どんなことを意識しながらレコーディングをしましたか?

田中:毎度手癖にならないように、これまでやってないことをやろうとしてるつもりなんですけど、いつも難しいなと思うのは、歌入れのときって、まだこの世に存在してない歌なわけじゃないですか。歌詞を書きながら散々イメージトレーニングはするものの、歌入れの日はまだその歌をどういう風に歌っていいものか、自分の体でわかってない状態なんで、なかなか緊張感があります。

田中:歌入れするまでは、ほにゃらら英語で歌ってるわけですから、どっかの外国人のつもりで歌ってるわけですよ。それが歌入れの日に、自分の歌っていうのを見つけていく感じなんです。だんだんと、日本人である自分の歌が見えてくる。それは非常にやりがいがありますね。

ー途中で高野さんからリズムの話がありましたが、田中さんの歌自体もGRAPEVINEの曲のグルーヴを大きく担っている印象があって。GRAPEVINEは曲を作る上でセッションを大事にしているバンドで、プリプロした後にもう一度アレンジをし直すという話を聞いたことがありますが、ボーカルもある種楽器のひとつのように、一緒にリズムを構築しているイメージが、他のバンド以上にあるんですよね。

田中:ほにゃらら英語で歌を作るのはそのためでもあるというか、結局プリプロ自体が壮大なセッションなんですよね。セッションしながら音色だったりアレンジだったりを決めていくわけなんですけど、歌もそうやって演奏を続けていかないと、イメージがあまり湧いてこないんです。なので、おっしゃってくださる通り、そういう産まれ方をしてるんだと思います。

―バンドのセッションに合わせて歌も調整しやすいように、ほにゃらら英語で作ってるわけですね。

田中:そう。仮歌をラララで歌う人もいらっしゃるようですが、俺はそれ絶対できひんなって。メロディーやリズムが変わっても全部ラララなんでしょ? 考えられへん。俺やったらそれ、たぶん歌詞書くときもラララしか出てこない。

ー高野さんはいろんなシンガーのレコーディングを見てこられたと思うんですけど、田中さんの特異性をどう感じられていますか?

高野:歌が上手いから、とにかくレコーディングが早い。さっき「この世にないものを生み出す」と言ってましたけど、聴く方としてはもうはっきりしたイメージを持っている印象で。早いから上手いとか遅いから下手とか、そういうことは全然なくて、それはホント人によりけりだと思うんですけど、田中くんは迷いがないんですよね。歌ってみたらちょっと違ったりとか、実際そういう瞬間もありましたけど、でももう決まったらドンといく。そこがかっこいいなと思います。

これまで以上に感情がストレートに表現された歌詞

ー歌詞についてもお伺いすると、この数年に社会や自分の身に起きたことを見つめながら、曲によっていらだったり、自戒したり、前を向いたりもしていると思うんですけど、そういった感情表現がこれまでの曲に比べてよりストレートに出ているというか、ブレーキを踏まずに書き切ってる部分がこれまでより強い印象を受けました。

田中:それはおっしゃる通りで、これまでは言いたいことや思っていることを、フィクションとして寓話的な落とし込み方をしてました。シェイクスピアじゃないですけど、社会的なこととか人間の綺麗なとこ、汚いとこみたいなものをお話にする、という感じで。

田中:だけど今回は、もっとむき出しな感じでいいんじゃないかと思って。それはやっぱり、曲のアレンジに呼ばれたと言いますか。“雀の子”みたいなストレンジなものもありますし、“Ub(You be on it)”みたいなソリッドなものもありますし、ギターががっしり鳴ってる曲も多いですし、むき出し感みたいなのはそういう曲たちに呼ばれたんだと思うんですね。だから、お話にするというよりは、もうちょっと感情的なもの、ダイレクトなものが出ていいんじゃないかなと思いながら書いてました。自分の気分とかモードとか、そういうのもあったんでしょうけど、曲がよりその背中を押してくれた感じはありましたね。

ー高野さんは作詞家としての田中さんをどんな風に見ていらっしゃいますか?

高野:田中くんの歌詞の才能なんて、僕が言える立場じゃないですよ。いつも素敵だなと思います。今作については、今田中くんが話していたように、「今回やらかしまっせ」みたいなLINEも来てましたし(笑)、実際目に飛び込んでくる言葉が多い印象で、こんなチャンス二度とないかもしれないから、より一層、言葉がはっきり聴こえるように録りたいと思いました。

ーなるほど。

高野:あと田中くんの、ライブで言葉が爆発していく感じとか、歌詞と歌が一緒に育っていく感じもすごい好きで。同じように歌う美学もあるとは思うけど、GRAPEVINEは曲が育っていくんですよね。昔の曲をやっても前と全然違う。田中くんはライブの人っていうか、そういう側面を持って歌詞も書いてるから、古い曲を今演奏してもまた違った聴こえ方がして、そこは魅力のひとつだと思います。

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