日本のファッションシーンにおいて、確固たる地位を築きつつある、デコラティブなアウトソールが印象的なフットウェアブランド・grounds。デビュー当初は「歯」とも呼ばれていたという、半透明のぷっくりとしたソールが印象的な靴は、数年前までサブカル界隈の子たちが履いていたかと思えば、今やモードラバーでさえも、その動向を追う存在になっている。
仕掛け人は、あのアントワープ王立芸術アカデミー・ファッション科を主席で卒業し、MIKIOSAKABEやファッションスクール・coconogaccoなどの運営に関わり、この10年で日本のファッション業界にさまざまなインパクトを残してきた坂部三樹郎。日本における既存のファッションシステムを悠々とかいくぐり、アントワープで鍛えられた豊かなクリエーションの力を多方面に発揮する坂部の手腕は、業界でも一目置かれている。そんな坂部は、groundsを通して何を表現しようとしているのか。groundsのアイデンティティについて、彼にさまざまな角度から話を聞いた。
INDEX
「顔」中心だったファッションの先へ。足元から立ち上がる人間像を探求した靴
─まず、groundsは一言でいうとどのようなブランドですか? 設立から現在までの流れを教えてください。
坂部:groundsは特徴的なアウトソールに象徴されるフットウェアブランドです。設立から4年、紆余曲折がありながらも順調に成長していると感じています。
─ご自身が手掛けられているファッションブランド・MIKIOSAKABEがあるなか、どうして靴を作りたいと思われたのでしょうか?
坂部:近年の洋服は、顔に目が行く作りのシャツやジャケット然り、「知能が重要だ」という思想を起点に、間違いなく頭部を軸にデザインされていました。
坂部:しかし、人間と社会との関係を考え、時代のフレッシュな空気を反映したものがファッションです。その点において、次の時代の「新たな人間像」を提案する必要があるように感じました。そこで、何か違うアプローチはないものかと模索していたところ、靴が特徴的だと全身に目が行き、今までと違う見え方になると気づいたんです。
―なるほど、次は足元に注目されたんですね。
坂部:はい。頭や顔を中心とした発想ではなく、足元から発想することで新しい人間像を提案できるのではないかと考えました。groundsは文字通り、地球に接地している人間の足元からデザインを考えるブランドで、スタイリングの基点となるように見えるデザインを開発しています。
また、靴は洋服とアプローチが異なり、建築的な要素があったり、顔から一番遠く、地球と人との関係においてもっとも重要なプロダクトであるという点も面白いです。
―そもそもそういった発想はどのようなところから生まれるのでしょうか?
坂部:まずは現状や既存のものに対する不満から始まることが多いです。 たとえば、スニーカーというアイテム一つとっても、動きやすさ、軽さなどの機能性に偏った進化をしていますが、それだけだとつまらない。そこにファッション性が加わったらどうか。そんな発想からデザインに落とし込んでいきます。