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『ブリング・ミンヨー・バック!』、民謡クルセイダーズと共に民謡を多角的に探求する

2023.9.15

#MOVIE

©Yuji Moriwaki All rights reserved

民謡を多角的に探求する

同作をあえて分けるとすれば、2つのパートになる。民謡クルセイダーズの意義と「民謡とは何か」を探る前半。そして、コロンビアでのレコーディングを含め、ワールドツアーの様子を撮影した後半部だ。

前半は、民謡クルセイダーズの国内での演奏を映しながら、レコードや祭りの映像を交えつつ日本各地の民謡を紹介している。その際、元ちとせや久保田麻琴などのアーティスト、ピーター・バラカンや岸野雄一、大石始といった批評家、DJの俚謡山脈のインタビューを交えつつ、民謡を多角的に学びほぐしていく。

特徴的なのはリズムが強調されている点だ。リズムについて語られた後、各地の祭りを映すカメラは、人々が踊る姿と共に、手拍子や音を鳴らす下駄にもフォーカスする。大きく鳴り響くクラップ音によって、民謡がだんだんとグルーヴィーなダンスミュージックのように聞こえてくるのだ。

そのようにして、さまざまな観点から捉え直された民謡の歴史に、民謡クルセイダーズの活動も位置付けられていく。民謡とポピュラーミュージックとの融合の歴史、とりわけ、ラテンと日本の民謡の関係について語られた後、民謡クルセイダーズと、日本を代表するラテンビッグバンド、東京キューバンボーイズとの共演コンサート映像が流れるのは象徴的だ。

この共演の場面に限らないが、同作は、アーティストのカリスマ性を過度に強調するような仕方では、ライブ映像を使っていないのも印象的だ。とりわけ前半部は、ライブが映ったかと思えば、すぐにインタビューやレコードなどの映像と混ぜられている。近年の人気アーティストのドキュメンタリーでは、直接的な新作プロモーションに近いものやジャーナリズムが欠如した作品も存在する。同作はそうしたものとは一線を画しており、前述の通り、民謡自体を深く探求しながら、民謡クルセイダーズとを結びつけている。

©Yuji Moriwaki All rights reserved

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