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【座談会】『べらぼう』『ばけばけ』『あんたが』ドラマライター3人はどう見た

2025.11.30

#MOVIE

三谷幸喜による久々の連ドラ、野木亜紀子×大泉洋のドラマなど話題作が目白押しの2025年秋ドラマ。そんな今期のドラマについて、NiEWでレビューを掲載するライター陣に語って頂く座談会を開催しました。今回は藤原奈緒、明日菜子、古澤椋子の3名による、2025年秋ドラマ全体の感想と個人的ベスト5、大河ドラマ『べらぼう』と朝ドラ『ばけばけ』、そして、『じゃあ、あんたが作ってみろよ』の感想をお届けします。

※座談会は2025年11月4日(火)に開催されました。また、本記事にはドラマの内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい。

ベテラン脚本家と新人脚本家がしのぎを削る2025年秋ドラマ

—2025年10月頃から放送しているドラマの中で、皆さんのお気に入りドラマの感想などについて伺っていきたいと思います。まずは秋ドラマ全体を見て、どんな点に注目されていますか?

藤原:幅が広いと感じています。心のベストを考えたら、10本くらいありました(笑)。ベテランの三谷幸喜さん、野木亜紀子さん、岡田惠和さんらの作家性はさすがだなと思いつつ、『フェイクマミー』や『ぼくたちん家』など、若手の脚本家さんのオリジナル作品もすごく面白くて。ほかにも突出した作品として『じゃあ、あんたが作ってみろよ』があり、スケールの大きい『ザ・ロイヤルファミリー』などもあるので、端から端まで見ていかないと間に合わないと思いながら見ています。

古澤:今期は、ゴールデン・プライム帯(19時~23時)にオリジナル脚本のドラマが多いと思いですよね。あとは、新人脚本家の起用が多く、先ほど藤原さんが挙げられた『フェイクマミー』や『ぼくたちん家』もそうですが、『絶対零度~情報犯罪緊急捜査』(フジテレビ系)も、近年の「フジテレビ ヤングシナリオ大賞」受賞者が2人(市東さやか、阿部凌大)、クレジットされています。『いつか、無重力の宙で』(NHK総合)も割と新人の方が担当されていたり、ドラマ業界全体で新人脚本家を育てていこうという熱を感じるクールになっていると感じます。

あとは、近年のドラマのトレンドになりつつある「大人が夢を追うドラマ」が今期も何本かありますね。『じゃあ、あんたが作ってみろよ』に代表される「男女論」みたいなところを語ろうとするドラマもあるんですが、そこに更に「同性同士のケア」みたいなところにフォーカスが当たってる作品も多く、すごい充実したクールですね。

明日菜子:今期は、本当にベテランの方と新人の方が競い合っている状態ですよね。テレビ局各局でシナリオコンクールが盛んに開催されているんですが、それが実ったのが、今期なのではないかなと思います。あと、古澤さんも仰ったように、ジャンルとしては、同性同士、特に男性同士のケアの物語が多い。今年の1月期に放送された『晩餐ブルース』(テレ東系)というドラマが、若い男性達が晩御飯を一緒に食べる「晩活」を通して、男性同士のケアを描いていたのですが、かなり斬新に感じました。今期は、『じゃあ、あんたが作ってみろよ』もそうだし、『小さい頃は、神様がいて』(フジテレビ系)も『ぼくたちん家』も、深夜ドラマだと『パパと親父のウチご飯』も、男性同士でケアをしてるんですよね。、やっぱり作り手の皆さんは、嗅覚がすごいんだなと思います。ここからまた、男性のケアが世間的にも注目されるんじゃないですかね。

「粋」を体現する大河ドラマ『べらぼう』と役者が光る朝ドラ『ばけばけ』

—今、放送中のドラマということで、大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』と朝の連続テレビ小説『ばけばけ』についても簡単に伺わせてください。

日本のメディア産業、ポップカルチャーの礎を築き、面白さを追求し続けた蔦屋重三郎の波乱万丈の生涯を描くNHK大河ドラマ。

藤原奈緒(以下「藤原」):『べらぼう』は今、終盤に差し掛かってきて、時代も人も主人公も変わっていくからこそ、関係性が変わっていくというのを、とてもリアルに描いてるなと思いました。『ばけばけ』には、すごいハマっていて、恨めしさというか、影の部分から世界を見ている感じが、新鮮だなと思って見ています。「家族と個人」という、朝ドラでずっと描かれてきたことも、今までにない形で描いていて、とても注目してます。

2025年9月から放送中のNHK朝ドラ『ばけばけ』。小泉八雲の妻・セツをモデルとした主人公を、髙石あかりが演じる。映画『バイプレイヤーズ』やNHK『阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし』で知られ、「日常系」を得意とする作家・ふじきみつ彦の脚本や、コントのようなコミカルな演出が話題に。主題歌を歌うハンバートハンバートは、『紅白歌合戦』への初出演も決定した。

明日菜子:『べらぼう』も『ばけばけ』もどちらも面白いですよね。『べらぼう』は、1年間ずっと面白いのがすごいと思っています。「江戸文化=粋」というイメージがあるんですが、その「粋」とは何かを、作品の中でずっと体現してくれていますね。ふじきみつ彦さんの朝ドラをずっと楽しみにしていたので、『ばけばけ』が毎日楽しくて嬉しいです。さっき藤原さんも仰ったように、「喜怒哀楽」とか「幸せ / 不幸せ」みたいに単純には割り切れない感情や温度感を物語に綴っているのがすごい。あと、役者さんがみな素晴らしいんですが、特に、トミー・バストウさんがすごくないですか? ながら見になりがちな忙しい朝に、時が止まってしまうような、物語の中に引っ張ってくれるような没入感がすごい俳優さんだなと思いました。

古澤椋子(以下「古澤」):『ばけばけ』は、端から端まで、あまりにもコメディ力の高い俳優さんが揃っているなと思っています。堤真一さんや北川景子さんも、ピリッとしたお芝居も出来るのに、総力戦で画面を面白くしているのが、朝から楽しいです。割と、朝ドラの中では新鮮な印象を持っていて、今作のヒロインは自分から物語を動かしていくキャラクターではないので、そこも含めて、どうなっていくのか楽しみにしています。

世間的な価値観を変え得る『じゃあ、あんたが作ってみろよ』

ドラマライターが選ぶ2025年秋ドラマベスト5(2025年11月4日時点)
ドラマライターが選ぶ2025年秋ドラマベスト5(2025年11月4日時点)

—今回は、皆さんに今期のお気に入りドラマベスト5を出して頂きました。まず、藤原さんと明日菜子さんが1位に、古澤さんが2位に選んで頂いたのが『じゃあ、あんたが作ってみろよ』、通称『あんたが』でした。

https://www.youtube.com/watch?v=2wjlR7raQHk
ハイスペックな男性と結婚し安定した人生を送るために努力を惜しまず、“モテ”に全ベットし、理想の男性・海老原勝男との交際をスタートした山岸鮎美。勝男のために勝男の好きな料理を献身的にふるまってきた。一方、自分は完璧と信じて疑わない自信家の勝男は、鮎美に完璧なプロポーズをするが、返事は「無理」。2人は「料理を作る」というきっかけを通じ、“当たり前”と思っていたものを見つめ直し成長していく。夏帆、竹内涼真のW主演による大人気漫画のドラマ化。

藤原:最初は、勝男(竹内涼真)が自分と同じ大分県民ということで気になって見始めました。今は、勝男が古い価値観から抜け出せないことを正すのではなく、なぜそうなったのかの背景を踏まえて、行動を見守るドラマである点が、すごく面白いと思っています。あと、鮎美(夏帆)にとっても勝男にとっても、自己解放の物語、あるべき役割から解き放たれた先を見る話ですよね。その点で、少し鮎美にも共感しつつ、見ています。

古澤:「じゃあ、あんたが作ってみろよ」というタイトルの回収はドラマの1話で終わっていて、原作だと、そこから勝男がどう変化していくのかがしっかり描かれているんですけど、ドラマでは、鮎美の変化を時間をかけて描きたいのかなと感じています。展開を入れ換えたり、ドラマオリジナルの要素を入れたりすることによって、鮎美の方が勝男より変化に時間がかかっているように見せていますよね。これから、勝男と鮎美が互いに性別による役割を押しつけ合っていたことへの反省が見えていくことで、更に意義深いドラマになりそうですね。

あと、脚本がすごい上手だなと思っていて、原作には無い、勝男の価値観を膨らませるようなセリフやコメディシーン、映像だからこそ面白いシーンが追加されているので、ドラマ化されて良かったなと思いながら見ています。

明日菜子:私は原作をずっと読んでいまして、ドラマ化してほしいと色々なところで言っていて。私、勝男というのは、演じる俳優さんにとって、俳優人生が変わるくらいの運命的な役になると思ってたんですね。もしも自分が男性俳優のマネージャーだったら絶対に取りたい役だなって(笑)。

ただ、この勝男という役、めちゃくちゃ難しいんですよ。まず、やっぱり視聴者からの反感をすごく買いやすい役だし、なおかつ「でも、しょうがないなあ、頑張ってるから見てやるか」くらいの愛嬌がないと、勝男自体を好きになれないと、少なからぬ視聴者が作品を完走できないんですね。なので、非常に難しい役ですが、竹内涼真さんが本当に上手く演じてくださっている!

私の勝手な印象では、竹内さんはどの作品に対しても本気で、「本気」と書いて「マジ」の人なんです。本作の勝男も、並大抵の覚悟じゃ背負えない役ですよ。そんな色々な作品で培ってきた竹内さんの誠実さが、この勝男という役にすごく反映されている。かつての小言も、勝男が本気で鮎美のために良いと思っての発言だからこそ、視聴者は違和感を持つし、その後も、勝男が本気で反省しているからこそ、視聴者は応援したくなる。技術的な上手さはもちろん、画面の前にいる視聴者みんなのハートを鷲掴みにして、かっさらっていくような、ダイナミックなお芝居をされる方だなと、改めて今回思いました。

色々な価値観の人が、しっかり対話をして先に進む誠実さ

https://www.youtube.com/watch?v=td_QzIDmHPk
本作は勝男や鮎美の世代だけでなく、彼らの親世代の葛藤も描く。(参考記事:人気ドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』が描く、誰もがハマるかもしれない落とし穴

明日菜子:あと、本作への反応として、鮎美という人間のダメさみたいなことを分析されている人が多い印象なのですが、私が思うに、あまりそこは根幹ではなくて。本作の何が恐ろしいかと言うと、今は理解していても、もしかしたら、いずれ自分も鮎美や勝男になるかもしれない。年齢を重ねたらとか、自分より立場が低い人が生まれたらとか、誰しもが陥る可能性がある現象を描いている。自己解放の物語でもあるし、内省の物語でもあるので、世間的な価値観を変えていくような作品になるんじゃないかと思いました。

古澤:明日菜子さんが仰るように、鮎美という人間を分析した感想が割と多い印象ですね。

明日菜子:そうなんですよ。でも、鮎美だから、女性側だからというだけでなく、やっぱり誰にでもそうなる可能性があると面白うんです。例えば、勝男と鮎美とは男女が逆でも、同性カップルでも。どんな性別でも、お互いにケアの精神を持っていこうねみたいな話だと思うので。

ちなみに、勝男が鮎美の新しい恋人のミナト(青木柚)に「鮎美の手料理、おいしく食べてあげてほしい」と言う第4話の一連の流れは、確かドラマオリジナルなんですよ。すごい原作の精神に通ずるセリフだなと驚きました。

古澤:原作にあるセリフかと思いましたよね。あと、1話のラストに、勝男が自分で作った筑前煮を食べることで、勝男が自分で自分をケアをしているのが際立っていて。男性が自分で自分をケアすることがしっかり描かれているのも良かったなと思いました。

—男性視点で言うと、最初の方は、勝男というキャラクターがあまりに典型的な九州男児みたいに描かれていてノれなかったんですが、勝男にとって初めての女友達として椿(中条あやみ)というキャラクターが出てきたところで、構図が進展していった感じを受けました。男性側のキャラクターも、勝男やミナトくんだけでなく、勝男の部下・白崎(前原瑞樹)とかがいたり、様々なパターンの人が出て来て、興味を持っていったのはそこら辺からでしたね。

古澤:確かに、色々な価値観の人がいながら、真正面からぶつかり合っている感じではなく、しっかり対話をして先に進もうとしている感じが、誠実というか理想的だなと思いますね。

—ありがとうございます。この後は『ちょっとだけエスパー』『ザ・ロイヤルファミリー』 『フェイクマミー』などのドラマについて伺っていこうと思うので、引き続きよろしくお願いします。

https://youtu.be/f8lQcy3K29I

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