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君の影が薄ければ、僕はもっと自由かもしれない
とはいえすぐにはそううまくもいかず、お金はゆっくり時間をかけて信用されてきた。そういう歴史を知ることができる展示だった。
なかでも驚いたのが、平安時代の中頃に銅銭の発行が中止されてから600年、日本では正式なお金が作られなかったらしい! 中国から入ってきた貨幣を使ったり民間で鋳造したものを代わりにしていたというのだ。けっこう長い間、国のオフィシャルマネーなし。アンオフィシャルマネーだけでやり取りしてたってこと。
もしくはやっぱり米とかを共通価値としてお金の代わりにしていたのかな。楽しそうだな。面倒臭そうだけどちょっと楽しそうって俺は思った。たぶん、今の世の中はお金が強すぎるって感じているから。君の影が薄い世界で暮らせたら、もしかしたら僕はもっと自由かもしれないから。
600年お金が作られなかったのは、貨幣を発行できる権力があって、信用があって、技術もある政府が出てこなかったってことみたい。今俺たちがお金と蜜月の時間を過ごせているのは、社会が成熟して、国って制度が安定的に運営できているおかげ。逆にいうと、お金との別れがくるとしたら国が崩れるときってことかもね。
お金と別れたくて別れたくて仕方なくても、「もう嫌い!」って言っても無駄だし、距離を置いて自然消滅を狙ってもダメ。この社会や国を壊すしかない。さすがにそれは面倒だ。本当にうっとおしい君だけど、僕たちうまいこと付き合っていくしかないね。僕は努力しようと思ってる。