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Stronger Than Pride

香田悠真と加藤修平 とめどないおしゃべりの中で発光する、二人の美意識と哲学

2025.1.31

#MUSIC

選曲しながら音楽におけるノスタルジーを探求

―しかし、『男はつらいよ』はなぜこんなにノスタルジーを誘うのでしょうか。坂本龍一さんも晩年、最初のタイトルバックが出て、このテーマが流れた瞬間に涙が止まらなくなるって言っていましたが。

香田:『男はつらいよ』に関して言えば、僕らの世代にとってはどこか架空のノスタルジーなのかなと思うけれど。

加藤:日本人のDNAに訴えかける、とか言いますけど、ノスタルジーって実は刷り込まれたものな気がするんですよ。けっきょく一番懐かしいのって、親の車でかかってたDA PUMPとかじゃないですか?

香田:本当の意味での故郷だ(笑)。この話は小林秀雄さんとかが故郷喪失ってテーマで触れてるよね。僕らは喪失を埋めるために、いろんなタイプのノスタルジーをいろんな国から吸収して作り上げてきたというか。

加藤:僕が一番ノスタルジーを感じるのはIVかVm6(マイナーシックス)ですね。僕がノスタルジーを感じる曲には大体入ってる(笑)。これ“Shenandoah”って言うアメリカの民謡なんですけど。

(“Shenandoah”の合唱版を流す)

―すばらしい。これはどういう歌詞なんですかね。

加藤:あー、なんか七夕のことを歌ってるように僕は感じるかも。

―七夕系ですか(笑)。教会で歌ってるのかな? なんかホーリーな感じが……

香田:アメリカの讃美歌って、こういうコード感よね。これも移民たちが異国に安心感を作るためなのかな。そして似てる曲がとてつもなく多い。

加藤:何でなんですかね。

香田:だれもが歌えるってこと重視でキーが少なくなったとか、構成も限られていったからかな……。

加藤:一番下の音がないって感じがするんですよね。難しい表現になりますけど、戻ってくる場所じゃないんですよね。あと、僕のノスタルジーっていうとコレとか……

(矢代秋雄の“夢の舟”を流す)

加藤:この人は、奇譚クラブっていう有名なSM雑誌によく寄稿してたらしいんですけど(笑)。

香田:フェデリコ・モンポウ好きでしょ?

加藤:あ、好きですね。初めて聴いたとき「これみんな好きなやつでしょ?」って思った。この“Impresiones intimas: No. 5, Pájaro triste”って曲が凄く好きで。

(フェデリコ・モンポウの“Impresiones intimas: No. 5, Pájaro triste”を流す)

香田:エマホイ・ツェゲ=マリアム・ゴブルーとか好き? エチオピアの作曲家なんだけど……

(エマホイ・ツェゲ=マリアム・ゴブルーの“Mother’s Love”を流す)

香田:モンポウとエマホイの郷愁性ってそれぞれ別物だけど、どちらも僕らには架空のノスタルジーを感じさせる。加藤くんは、意識して自分の曲に取り入れることはある?

加藤:自分の中でのリアルなノスタルジーは結構あるかもしれない。

香田:なんだか瞬間とっても苦い記憶がよぎった……みたいな感覚は大事だよね。

加藤:そういうのって大体違う色で表出してきますよね、それをキャッチすんのも面白いですね。詩とかも自分でキャッチできるようになったら面白いんでしょうけど。

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