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NEWS EVENT SPECIAL SERIES
Stronger Than Pride

加藤修平の「Stronger Than Pride」とは。ライター山塚リキマルと振り返る

2025.4.11

#MUSIC

アキムとこれから2人でやっていくぞって誓い合わないとなって。

山塚:年末年始って何してた?

加藤:ボケーッとしてましたね。何もしないことにしよう、って思って。去年ほんとに休みがなくって、身体も頭も止まるスキがなかったので、ここで休もうと。でも元旦からアキムと会ったりしたな。

山塚:打ち合わせ的な?

加藤:まぁ、軽く新年会もしつつ。去年、NOT WONKからフジ抜けちゃったじゃないですか。フジはバンドの中ですげえ色んなことやってくれてたんですけど、それが無くなって……で、リキマルくんもご存知だと思うんですけど、アキムってあの感じじゃないですか(笑)。

山塚:飄々としてるよね(笑)。

加藤:捕まえておかないとどっか行っちゃうんすよね(笑)。路肩で寝てたりするタイプなんで。2人のバンドにもなったし、これから2人でやっていくぞって誓い合わないとなって。いつ空中分解してもおかしくないって気はしてるんです、バンドがいい状況だとは思ってないので。そういうのもあって、アキムと「今年は頑張ろうぜ」って。

NOT WONK(写真左がアキム)

山塚:決起会的なね。では、そろそろ連載のまとめ的なところに入っていきたいんですが(笑)。当初の目的は、加藤くん的にはどのぐらい達成できたでしょうか?

加藤:どうなんでしょうね……SADFRANKでアルバム作るときも同じ気持ちだったんですよ。自分の中の、自分で見つけていない部分を探るっていう。そうなるとテーマとして、自分っていうものがめちゃくちゃ大きくなるじゃないですか。「自分とは」っていうと安っぽい哲学みたいだけど、そのテーマに凄く興味があったので、作ってみたんです。でも、完成してリリースして、ふと振り返ったとき、自分のことをデカいテーマとして扱いすぎだったんじゃないかなって。

山塚:私小説的になりすぎたみたいな感じ?

加藤:うーん、沖に一隻のボートを浮かべて自分を探す感覚でいたのかもしれないと。それってあんまり良い探し方じゃなかったんですよ。見つけたいものを見つける作業になっちゃうというか、新しい何かを見つける事にはならないんじゃないかって。だから、プロセス的には逆を辿るべきだなと。「これは自分じゃない」って決めつけちゃってる部分を、探し終えたファイルの中から見つめ直さなきゃいけないなって。

山塚:灯台下暗し的な。なんか見落としてるところがあるのかなっていう。

加藤:そういうのがあるのかなって。で、この連載をやってみた結果、新しいかどうかは別にして、「オレってこうだったよね」みたいな。シンプルに「話すのって楽しいよね」「恥の感覚ってあるよね」とか、そういう誤魔化せない部分をいっぱい話せた気がするんですよね。前述の通り、オレはあんまり人に認められていると思ってないんですけど、自分の中の誤魔化せない部分を認めてもらったなって。

山塚:発見っていうよりは、納得した的な。

加藤:「そうでございました」 っていう(笑)。大航海だ、旅に出るぞって言って船に乗ったはいいけど、探してたものは全然陸地に置き忘れてたみたいな(笑)。

山塚:それが分かっただけでも大きな収穫ですな。面白い連載だったと思う。

加藤:色んなものを見るときのモノサシとして、刺激的かどうかってさほど重要じゃなくなってきてるんですよ。それを大事にしてる時期ってめっちゃあったんですけど。

山塚:どれぐらい新しいかとか、どれぐらい刺さるかとか。

加藤:でも「刺激的」って型もあるよなって思い始めて。すげえノイジーとか、すげえデカいとか、すげえ静かとか。そういう型のもとに刺激ってあるような気がしちゃってきてて。それが見えると、何を見てもあまり刺激的には感じない。

山塚:ヤバいものってある程度テンプレートがあるからね。

加藤:それでも刺激的なものはあるし、求める気持ちもあるんですけど、現時点での自分はそこじゃないのかも。今回のアルバムもそうですけど、「何か起こしたい」みたいな気持ちがいままでで一番少ない。むしろ「何も起きないでくれ」とすら思っていたかも。暗い発言ですけど(笑)。

山塚:それは野心とは別な話だよね。

加藤:そうですね。目論見とか野心は全然あるんですけど、ふと自分の小さいところに立ち戻ったときに「もう何も起きなきゃいい」って気持ちもあるというか。Radioheadの“No Surprises”って曲が好きなんですけど、まさにそんなようなこと歌ってるんですよ。「もう何も起きなきゃいい」って邦題をつけたいとオレは思っているんですけど(笑)。

山塚:連載の締めくくりが「もう何も起きなきゃいい」なのは凄いね(笑)。

加藤:こう思うからこうしたい、っていう気持ちは何事にもあるんですけど、こう思うのは何でなんだろう? って思うんですよね、いつも。

山塚:思う理由ね。

加藤:思う理由を知りたくなってしまう。嫌いなことでも、なんで嫌いなんだろうと思って調べたり。そうするとあんまり嫌いじゃなくなってくるんすよね。気持ちより理由の方が大きくなってくるから。

山塚:なるほどね。加藤くんってロジカルな人だよなっていうのは連載通して感じたな。

加藤:でも、オレのロジックって、限りなく仮説に近いんですよ。こうなるかもしれないと思ってやってて、全然ハズれることがあるんで。で、それに対しての嫌悪感もないんですよ。答えじゃなくて疑問がそこにあるだけで誰かのためになることもあるんで。「何で?」って言うだけでいいことも多分あるはずなんすよ。大事じゃないですか、「何で?」って思うのは。

山塚:エビデンスとか対案がどうとか言ったりするけども、問いそのものに価値があるよね。それで勇気づけられたり、知見を得ることもたくさんあったりするし。えっと、それじゃ、そろそろ本気で締め括りたいと思うんですが、最後に何か言い残したことはありませんか。

加藤:ん~……難しいんですけど、持ち上げられたいワケではないんですよ。凄いよねって褒められたりしても、「自分の頭の中にあることの方がもっと凄いのに……オレはまだ何も出来てない……」みたいな気持ちになったりするんです。だから早く色んなことを形にしたいな、って思います。狙ったところに投げられるように、もっと精度を上げたいですね。ど真ん中に完璧に投げられるようになったら、それは全部をやめる日だと思いますね。曲でいったら、その一曲でいいはずなので。「一生コレってことで大丈夫です!」って言える日があったらいいな。

山塚:全部を打ち抜ける一発を、ぜひ叩き出して欲しいですね。では……連載、お疲れ様でした(笑)。

加藤:はい、ありがとうございました(笑)。

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