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Stronger Than Pride

加藤修平の「Stronger Than Pride」とは。ライター山塚リキマルと振り返る

2025.4.11

#MUSIC

人から認められてるとはあんまり思ってないですけど、自分のやってることが間違ってるとも思ってない。

山塚:そういえばNOT WONKの新譜『Bout Foreverness』、聴かせていただきまして。めっちゃカッコいいね。カッコいいとしか言えない(笑)。

加藤:あ、ありがとうございます(笑)。

山塚:それで、NOT WONKの1stってどんな感じだったっけ? と思って、遡って聴き返したりしたんだけど。で、加藤くんってやっぱ歌超上手いなって思った。加藤くんってソウルシンガーなんだなって。

加藤:マジっすか。

山塚:あくまで主観だけど、同時代の、同世代の、圧倒的に歌が凄いロックボーカルとして、踊ってばかりの国の下津くんと加藤くんって、オレの中でツートップ的な存在なんですよ。でも2人はシンガーとしてとても対照的だと思う。取材したとき、下津くんは歌詞とメロディが同時に出てくるって話してたんだけど、加藤くんは圧倒的にメロディが優位だって言ってたよね。

加藤:そうですね、一回思いついたメロディを忘れることってあんま無くって。こういうメロディを歌えたらいいな、っていうストックは頭の中にいっぱいあるんですよ。テンポ感とか使う楽器の種類とか込みでイメージがあるんですけど。下津さんってやっぱフォークシンガーじゃないですか。

山塚:フォークとブルースだなって思う。

加藤:歌詞のはみ出し方とか、憧れる部分ありますね。一昨年かな、苫小牧に下津さんが弾き語りで来てくれたとき「加藤ちゃん一緒にやろや!」って誘ってくれたんですけど、認めてくれてる! って思って嬉しかったんですよね(笑)。オレ、あんまり人から認められてると思ってないんですよね。

山塚:あんまり好きな言葉ではないんだけど、それはいわゆる自己肯定感が低いみたいなこと?

加藤:うーん……人から認められてるとはあんまり思ってないですけど、自分のやってることが間違ってるとも思ってないんですよ。伝わると思ってやっているけど、そんなに簡単に伝わるものじゃないとも思うし。だから「良い」とか「凄い」とか言葉にして言われると、おだった犬みたいになる(笑)。

山塚:連載の第2回で聞いた話だけど、向井秀徳さんに「オレが今までレコードで聴いてきたレスポールと同じ音をしている」って言われたのとか、すごくいいエピソードだよね。

加藤:飛んでくると思ってなかった方向から飛んでくると、ビックリしますよね。

山塚:誰のリアクションもない環境にいたとしても、音楽やると思う? たとえば無人島に一人、加藤くんが取り残されたとしても、そこで曲作ったりする?

加藤:ずっと歌ってそうな気はしますね。ずっと歌ってるんすよ、オレ。無意識に口笛めっちゃ吹くし、耳に残ったCMソングとかもすげえ歌うし。楽天カードのヤツとか(笑)。

山塚:鼻歌とか歌う?

加藤:めっちゃ歌いますよ。

山塚:根本的に歌うことがめっちゃ好きなんだね。あのさ、日本の音楽教育のあり方を批判したいとかそういうワケじゃないんだけどさ、日本の音楽の授業って、むしろ音楽を嫌いになる方向に仕向けてるじゃん。

加藤:そうっすね。音楽って恥ずかしいことって刷り込まれますからね。

山塚:合唱コンクールとかさ、ノーミスクリアこそが正義って価値観があるよね。オレもそういうのがトラウマ化してたから、人前で歌ったり演奏するなんてとんでもない事だってずっと思ってた。

加藤:オレもそうですよ。だから歌わなくていいように指揮者やってました。「合唱とかめんどくない?」みたいな集団心理があるじゃないですか、そこで「めんどくないよ!」とは言えなくて。中学のときとか皆に合わせてたんですけど、でもいざ本番になって、めんどそうに歌う事だけは出来なかったんですよ。そういう風に歌うのは嫌だなって。小学校のときは凄く合唱好きだったんですよ。

山塚:そうなんだ。

加藤:僕が通ってた小学校は人が少なくて、全校生徒で10人いるとかいないとかだったんで。だから学芸会のときは全校合奏だったんですよ。全校生徒で一曲を演奏するっていう。

山塚:1年生から6年生まで? 凄い。

加藤:1年の子はタンバリンとか鍵盤ハーモニカで、上級生になるにつれシンセとか木琴をやるみたいな。オレが6年生のとき、『ハウルの動く城』のテーマを全校合奏でやったんですけど、それがヤバかった記憶がありますね。オレはそのときピアノをやったんですけど、本番が素晴らしくて。小学生だから全然演奏は下手くそなんですけど、凄く気持ち良かったんですよね。合奏ヤバ! みたいな。

山塚:それは良い体験だね。

加藤:そういう良い体験をしてたのに、中学に上がると素直じゃいれなくなっちゃったというか。シンプルにスレないといけなくなっちゃって。でも『ハウル』をやったときの気持ち良さを絶対自分では否定できなかったんですよ。だからせめてもの反抗として指揮者に立候補して。

山塚:そういう原体験があったんだ。久石譲の曲ってダイナミックさ半端ないもんね。あれ全員で演奏したら感動っていうか、トランスするよね。

加藤:すごいっすよね。坂本龍一とかもそうだけど、クラシカルなのにメロディがポップでわかりやすい曲がいっぱいあるじゃないですか。その強度ってヤバいなと思う。

山塚:久石譲も坂本龍一も、とても大衆的なメロディを書くよね。じーちゃんばーちゃんから小さい子供まで、誰が聴いてもいいと感じるような、最大公約数的なポップネスというか。

加藤:ムチャクチャいいですよね。

山塚:加藤くんは劇伴とかサントラってやった事ないんだっけ?

加藤:ないですね、リーバイスのCMはやった事ありますけど。映画音楽とかやってみたいですけどね。

山塚:好きなサントラ盤とかある?

加藤:『フィラデルフィア』って映画が好きで。ニール・ヤングがその主題歌をやってるんですけど、それは葬式でかけたいぐらい好きですね。

山塚:おお、これはサントラにSADEも参加しているんですな。

加藤:ぜひ聴いてみてください。音楽も映画自体も、すごく悲しいんですけど。

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