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その選曲が、映画をつくる

デヴィッド・フィンチャー『ザ・キラー』 ネオリベの暗殺者はザ・スミスを聴く

2023.11.17

#MOVIE

The Killer. Michael Fassbender as an assassin in The Killer. Cr. Netflix ©2023
The Killer. Michael Fassbender as an assassin in The Killer. Cr. Netflix ©2023

アイロニカルなモノローグと、「決して消えない光」

以下は、重要な「ネタバレ」になるので、できれば本編鑑賞後に改めて読んでいただきたい。

The Killer. Michael Fassbender as an assassin in The Killer. Cr. Netflix ©2023

『ザ・キラー』の本編は、自宅へと戻った暗殺者によるモノローグとともに閉じられる。この謎めいたラストシーンで、なにやら彼は、これまでの言動とはまったく様子の異なる述懐を行う。あれほどまで職業的な熱心さで自らの行く末を予測せよと言っていたのに、ここではずばり未来は予測不能であると突如として主張する(認めてしまう)のだ。そして、それを認められないものは、数少ない特別な人間なのではなく、「私と同じ大勢の中の一人」に過ぎないのだと説く(オーバーワークに苛まれる私達現代のビジネスパーソンよろしく、不意に目尻を痙攣させながら)。

私はこのラストシーンに、フィンチャーとウォーカーの、真摯な作家性を見出さずにはいられない。本編において暗殺者が重ねてきた行動、そしてそれを規定してきた倫理 / 論理が、実のところ多くの観客が内在化してやまないそれを投影しているに過ぎなかったということが、他ならぬ暗殺者の口からいきなり暴露されるのだ。改めて、なんというアイロニー、なんという迂遠な行き方で達成されるメッセージであろうか。けれど、アイロニカルで迂遠だからこそ、強烈な印象を与えるのも確かなのだ。

続くエンドロールでは、一連のThe Smiths攻めを締めくくるように、名曲“There Is a Light That Never Goes Out”が流れる。「決して消えない光」とは一体何なのだろう? そう考えながら、私はぼんやりとエンドロールを眺め続けるほかないのだった。

『ザ・キラー』

2023年11月10日(金)よりNetflix独占配信
監督:デヴィッド・フィンチャー
出演:マイケル・ファスベンダー、ティルダ・スウィントン、アーリス・ハワードほか
https://www.netflix.com/jp/title/80234448

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